■新型ハリアーのファーストインプレ!(REPORT/鈴木直也)
2020年6月1日にコロナ自粛が緩和され、クルマ業界も平常運転への第一歩を踏み出した。
復活イベント第1号となったのは新型ハリアーのプロトタイプ試乗会。発売前ということもあり「三密を避けつつ機密の守れる」袖ヶ浦フォレストレースェイでの開催とあいなった。
ご存知のとおり、新型ハリアーはRAV4とパワートレーン/プラットフォームを共用する姉妹車だが、この新型から北米をはじめとしたグローバル市場にも展開されるのが注目のポイントだ。
同じGA-Kプラットフォームながら、オフロードRV感覚を強調したRAV4に対して、ハリアーは都会派SUVクーペというのが役割分担。デザインの方向性を大きく振って、北米のような大きな市場で共食いが起きないよう配慮されている。
実車を見比べてみればわかるが、この「デザイン面での性格別け」がじつに上手に行われている。
ハリアーの全長はRAV4より140mm長い。同じGA-Kプラットフォームでホイールベースは共通(2690mm)だから、つまりこの数字は前後オーバーハングが延長されているということ。その効果もあって、全高は30mmしか低くないのにその数字以上に精悍なクーペフォルムに見えるのだ。
コクピットにおさまって周囲をチェックしてみると、インテリアもRAV4とは方向性の違うゴージャス系デザイン。アウトドアテイストのRAV4とは、何から何まで対照的に誂えてある。サーキットにコースインしてからも、この「ゴージャスな都会派」イメージがアタマから離れない。
最初の試乗を終えて、ぼくはチーフエンジニアに「足のしなやかな動きや粘っこいロール感は、やっぱり低重心化が効いているんですかね?」と質問してしまったのだが、お答えは「そうおっしゃる方が多いんですが、重心高の数字とかは変わってないんですよ」というもの。
乗り心地の味付けは足回りのチューニング、とりわけ摺動摩擦(いわゆるフリクション)をプラス方向で活用する新型ショックアブソーバーの貢献度が大きいのが実情。先入観に惑わされて「SUVだけに低重心で走りがしなやか」と思い込んでしまったわけだ。
「うーん。ヤラレタ」というわけで、2回目以降の試乗はサスペンションのストローク感に神経を集中して観察してみたのだが、これがなかなかの逸品。敢えて40km/hくらいの速度で縁石に乗り上げたり、サーキット走行モード以外の入力パターンも試したのだが、「しなやか」という評価は一貫して揺るぎがない。
サスペンションの基本特性が優秀なのはRAV4ともどもこのプラットフォームの美点だが、ハリアーはそこに優雅さと表現したい「味」が加わった印象。遮音対策の強化によって向上した静粛性と相まって、乗用車としての上質感はカムリを超えたと評価してもいい。
パワートレーンに関してはRAV4と基本的に同じだが、今回サーキットぜ全開領域の多い走りを試してみて、「やっぱしスゴイな!」と感心したのはハイブリッドのパワフルなことだ。
ハイブリッドは排気量2.5LとNAより大きなエンジンを積み、エンジン単体で179ps/22.5kgm、前後2つのモーターを合わせたシステム最高出力は222psもある。
スペックがこれだから、本来はSUV向きではないサーキットでもまったく不満なし。まぁ、本気で「攻める」にはサスも柔らかいしタイヤもキャパ不足なのだが、豪快に振り回せるという意味では”スポーツハイブリッド”と呼ぶのが相応しい。予算に余裕があるなら、これを買っておけば間違いないだろう。
いっぽう、軽快で好ましいのがNA2L+ダイレクトシフトCVTのドライバビリティだ。NA2Lの新型エンジンは、全体にトルキーだし吹き上がりも軽快。優先テーマは熱効率向上なのだが、ただのツマラナイ燃費志向エンジンではなく、がんがん踏んで走らせたい時には、タフな要求に応える実力を持っている。
コスパでみたら、ハリアーのベストチョイスはこっちかも? そう思った次第でございます。
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