クルマだけではなく電車も水素で動く時代に!? トヨタが開発に参画!
2020年10月6日、トヨタが「水素をエネルギー源としたハイブリッド車両(燃料電池)試験車両の開発」と題した一枚のリリースを発表。
東日本旅客鉄道(JR東日本)、日立製作所とともに、水素を燃料とする燃料電池と蓄電池を電源とするハイブリッドシステム搭載試験車両を連携して開発することに合意したことが明かされたのだ。
ファンならずとも業種の垣根を越えた次世代電車開発の行方は気になるところだが、すでにMIRAIで実用化されているFCV(水素燃料を用いた燃料電池車)技術は、どのように電車へ活かされるのか? その中身を解説していきたい。
文/鈴木直也、写真/トヨタ
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FCV技術を鉄道に! トヨタの狙いとは?
トヨタの燃料電池スタック(FCスタック)は、本社工場敷地内に建設した専用建屋で生産されている。
工場というと巨大な平屋をイメージするが、このFC専用棟は8階建て延べ床面積は約7万平方メートルのビルディング。外観もまるでオフィスビルのようで、クルマの心臓部を生産する工場というイメージとはだいぶ違う
ここにはFCスタック関連の研究施設も同居していて、まさにトヨタの水素戦略にとってのヘッドクォーター。
トヨタはこの施設への総投資額は明らかにしていないが、巨額の開発費が投じられているのは間違いない。水素戦略にトヨタがいかに「本気」であるか。それを象徴するシンボルと言っていい。
そこで開発されたFCスタックを搭載する主役が新型MIRAIというわけだが、現状では乗用車タイプのFCVだけでは巨額の投資に見合うほどの需要がない。
そこで、さまざまな業種とコラボレーションして、水素エネルギーの輪を広げていこうというのがトヨタの戦略だ。
水素を消費してくれる需要家が増えないことには、大きな設備投資を要する水素供給側のビジネスも回らない。ここがバランスよく機能してはじめて、水素エネルギー社会という「夢」が現実のものとなる。
非電化区間のディーゼル機関車などをFC化
そのために、トヨタはこれまでFCトラックをセブンイレブンの配送に使う実証実験や、日野の大型トラックへの応用、中国メーカーとの共同研究など、FC関連でさまざまな施策を展開してきたのだが、今回新たなニュースとして発表されたのが鉄道部門への進出だ。
その内容は、JR東日本、日立製作所と共同して、燃料電池ハイブリッドシステムを搭載した試験車両を連携して開発する、というもの。
これによって、ディーゼルがカバーしている非電化区間の鉄道車両を水素燃料化するのが目的だ。
鉄道はもともとCO2排出量の少ないクリーンな輸送手段として評価されているが、非電化区間を走っているのはディーゼル機関車やディーゼル気動車。
CO2削減というトレンドからすると、ここを水素エネルギーに置き換えて、車両から排出するCO2ゼロを目指すのは魅力的なテーマといえる。
現在、JRが走らせているディーゼル機関車やディーゼル気動車のエンジンは、おおむね400〜600psクラス。技術的にみると大型トラックとそれほど変わらぬスケールでFC化できる。
また、あらかじめ走行経路の決まっている鉄道は、蓄電池を併用したハイブリッドシステムとの相性がよく、これまでにJR東日本と日立製作所はディーゼル気動車ベースのハイブリッド車両を製作した実績がある。
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