■欧州では違法駐車の取り締まりが少ない?
欧米では、路肩や副道(大通りの外側に設置された通路)が、公的に認められた駐車スペースになっている。国や都市によって異なるが、駐車場を借りず、路上駐車で自家用車を保管することもできる。
そのぶん、大都市の中心部では、どこも場所の取り合いは厳しく、なかでもパリでは、少しでもすき間があると無理矢理ねじこみ、パンパーで前後のクルマを物理的に押して、自分のスペースを広げるのが名物だ。
そのためヨーロッパの都市部では、狭いすき間に止められる全長の短いクルマが重宝され、スマートやiQも、そのニーズから誕生した。路上駐車はカーライフの重要な一幕で、そこで数多くのドラマも生まれてきた。
欧米でも、違法駐車の取り締まりは厳しいが、なにしろ駐車禁止場所が限定されている。逆に日本は、駐車が禁止されていない道路などほとんどない。
欧米では最初から、かなり多くの路肩が駐車スペースになっているが、日本には最初からそういう設計がなく、ほんの一部にパーキングメーターが設置されているだけ。その他の道路はほぼ全面駐車禁止なのだから、実に極端である。
■取り締まり強化の功罪
現在の取り締まり方法については、施行直後は多くのドライバーから怨嗟の声が上がったら、何を叫んだところで容赦なく取り締まられたため、すぐ諦めに転じ、みんな路上駐車をやめた。もはや路上駐車という選択肢は、ドライバーの頭から消えている。
これは、果たして良かったのだろうか? どんな行政の変更にも功罪はあるが、私としては、功の方が大きかったと考えている。最大のメリットは、都市部の交通がスムーズになったことだ。
東京都内の一般道を例に挙げると、それまでの平均速度は20km/h弱だったが、現在は23km/h前後に上昇している。「それっぽっちかよ!」と思われるかもしれないが、実感としては断然スムーズになった。
違法駐車車両は、すべてが交通の妨げになるわけではないが、1台が邪魔な場所にあると、クルマの流れが一気に淀み、ドライバーのストレスも一気に上昇する。それが消えたのは非常に大きい。これが最大の「功」である。数値化はできないが、事故防止の効果もあっただろう。
施行直後は、「そんなこと言ったって、駐車場がないじゃないか!」というドライバーの叫びが聞かれたが、魚心あれば水心。需要があればそれに応えようとするのが市場経済で、都市部ではコインパーキングを始めとする有料駐車場が大増加した。
「こんな狭いところに!」と驚嘆するようなコインパーキングも現れて、狭い土地が有効活用されるようになった。これも小さいながらに「功」の側だ。
地方部では、もともと無料駐車場付きの店舗が当たり前だったが、駐禁取り締まりの強化が、従来型の商店街の衰退に一役買ったのは、「罪」の方に当たるだろうか。
■それでも駐車可能な道路が少なすぎる!?
それにしても、日本ほど駐車が許されている道路が少ない国はない。なんとかならないのだろうか?
残念ながら、きわめて難しい。日本の道路は狭い。
日本は、明治以来交通手段として鉄道に注力し、道路を後回しにしてきた。都市部は過密で土地に余裕がない。今から土地を買収して道路を広げるには、何十年という歳月が必要で、一朝一夕にできるはずもない。
日本の大都市部にも、「ここはパーキングメーターを設置してもいいんじゃないか?」という場所は少なくないが、近年は自転車が走るスペースの確保も必要になり、新設は困難になった。それ以前に、駐禁取り締まりの強化によって、日本人は路駐という選択肢そのものを考えなくなった。
東京の都心部には、目の玉が飛び出るような高いコインパーキングも少なくないが、大都市内をクルマで移動するのは贅沢なことであり、コストがかかるのは仕方ない。地方部では無料の駐車場がどこにでもあるので不便はない。なんだかんだで、15年前の道交法改正は英断だった、と言うことだろうか。
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