逆さ虹に白い虹、水平線から上る紅の光線……太陽が生み出す奇跡の絶景

逆さ虹に白い虹、水平線から上る紅の光線……太陽が生み出す奇跡の絶景

北海道留萌市在住の写真家・佐藤圭さんが撮った貴重な動物、風景写真をお届けする週末連載。

 第38回は、ある一定の気象条件が重なると天空に現れる、不思議な大気光学現象を紹介します。

 薄曇りの空に帯状に架かる水平な虹、太陽の両側に現れる二つの幻の太陽……などなど、幻想的な光景をてんこ盛りでお届けします。

写真・文/佐藤圭

【画像ギャラリー】4つの大気光学現象を1枚の写真に収めたのがこちら!

太陽と空気中の水分の共作で現れます

 自然風景を撮影していると、地球という大自然を実感する不思議な大気光学現象に出会うことがあります。

 代表的なものは、空に架かる7色の橋「虹」ですが、今回は、僕が撮影した、あまり知られていない特殊な大気光学現象を紹介していきます。

逆さ虹に白い虹、水平線から上る紅の光線……太陽が生み出す奇跡の絶景
雨竜沼湿原の「白竜の滝」に現れた虹

 湿原などの湿度の高い場所で、薄く霧が立ち込めた状態で、切れ間から太陽の光が射しこむと、7色ではなく白い虹が発生することがあります。これを「白虹」と言います。

逆さ虹に白い虹、水平線から上る紅の光線……太陽が生み出す奇跡の絶景
雨竜沼湿原で、霧が晴れようとする瞬間に出現した白虹

 次は、登山中にときどき遭遇する現象ですが、自分の立ち位置より下界に霧が発生し、それを見下ろしたとき、背後から太陽の光が射すと、霧に映った自分の影の回りに虹色の光の輪が出現することがあります。

 この現象は、よく発生するドイツの山の名を冠して「ブロッケン現象」と呼ばれています。古来、欧米の人々は、光の輪の中の影を妖怪と、日本では観音様と、まるで真逆の解釈をしていたそうです。

逆さ虹に白い虹、水平線から上る紅の光線……太陽が生み出す奇跡の絶景
大雪山系黒岳登山中、まねき岩近くで、ブロッケン現象に遭遇

 太陽や月の周りに薄い雲がかかったときに、その回りに光の輪が出きることがあります。それが、太陽のときは「日暈(ひがさ・にちうん)と呼び、月の回りにできるものを「月暈(つきがさ・げつうん)」と呼びます。

逆さ虹に白い虹、水平線から上る紅の光線……太陽が生み出す奇跡の絶景
留萌の黄金岬で撮影した日暈
逆さ虹に白い虹、水平線から上る紅の光線……太陽が生み出す奇跡の絶景
こちらも黄金岬で撮影した月暈

 「日暈」の両側に、虹色に輝く光が発生することがあります。太陽が複数あるようにも見えるので、「幻日(げんじつ)」と呼ばれます。

 「幻日」の外側に水平方向に伸びる光の線が「幻日環」です。

 へんてこりんな虹が現れることもあります。太陽の真上に、天頂を中心とした逆さの弧の虹が発生するのが、「環天頂アーク」です。

 冬のある日、この「日暈」「幻日」「幻日環」「環天頂アーク」が同時に現れて、1枚の写真に収めたことがあります。

逆さ虹に白い虹、水平線から上る紅の光線……太陽が生み出す奇跡の絶景
太陽の回りに日暈、その両側に幻日と幻日環。その上空には環天頂アーク

 日本では、夏至を挟んだ半年間だけ現れるへんてこ虹もあります。太陽の下に、弧ではなく水平な帯状に発生する虹です。これは「環水平アーク」と呼ばれます。

逆さ虹に白い虹、水平線から上る紅の光線……太陽が生み出す奇跡の絶景
初山別村金刀比羅神社の上空に現れた環水平アーク

 日の出、日没のときにだけ見られる現象もあります。

 地平線か水平線にある太陽から真上に向って炎のような紅の光が伸びることがあります。これが「太陽柱=サンピラー」です。

 僕の地元の留萌では、夕陽が海に沈むときに観察できることがありますが、神々しいまでに幻想的な風景です。

逆さ虹に白い虹、水平線から上る紅の光線……太陽が生み出す奇跡の絶景
水平線から立ち上る太陽柱。黄金岬からの撮影
逆さ虹に白い虹、水平線から上る紅の光線……太陽が生み出す奇跡の絶景
金比羅神社と太陽柱

 これらの大気光学現象は、大気に漂う水、氷の粒などに光が当たることにより起こります。

 撮影するコツは、広角のレンズを持ち歩くことです。大きな空で起こる現象なので、標準のレンズでは収まり切りません。

 いつ、どこで現れるかわからない大気光学現象を写すために、僕は、常に広角のレンズをバックに入れるようにしています。

 とても珍しい現象ではありますが、僕の地元の留萌や北海道独特のものではありません。条件さえ重なれば、本州以南でも見ることができます。

 ビルに囲まれた都会で出会うのは難しいかもしれませんが、休日には広いところに出かけて、空を見上げてみませんか。こんな美しい現象に出会えるかもしれませんよ。

佐藤 圭  kei satou

 1979年、北海道留萌市生まれ。動物写真家。SLASH写真事務所代表。MILLETアドバイザー。

 日本一の夕陽と称される留萌市黄金岬の夕陽を撮影するために写真家の道に入る。北海道道北の自然風景と野生動物を中心に撮影を続け、各地で写真展を開催し、企業や雑誌、新聞などに写真を提供している。

 2018年、エゾナキウサギの写真「貯食に大忙し」で第35回『日本の自然』写真コンテスト(主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会)で最優秀賞受賞。

ウェブサイト:https://www.keisato-wildlife.com/

Facebook:https://facebook.com/kei.sato.1612

インスタグラム:https://www.instagram.com/slashslash_photography/

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