2018年6月26日に発売された新型(15代目)クラウンの発売1カ月後の受注台数が、月販目標台数4500台に対して約7倍にあたる約3万台と発表されました。絶好調の立ち上がりといえ、ド派手な王冠グリルで話題となった先代クラウンの発売1カ月後の受注台数は約2万5000台であり、先代に比べて5000台ほど上回っています。
ひとまず好調なスタートを切ったクラウンですが、イマイチ抜け出せない苦悩があります。それは購入ユーザー層の若返りができていないこと。クラウンユーザーの平均年齢は実に65歳と高齢化が進んでいて、トヨタはそれを変えるべく40〜50代のバリバリ稼ぎ盛りの世代を取り込もうとしています。
はたしてこの新型クラウンで念願の若返りが図れるでしょうか? そもそもクラウンは、なぜ「おっさん向けのクルマ」と言われてしまうのでしょうか? 清水草一氏が解説します。
文/清水草一
写真/編集部
■若返り策は、15年前のZEROクラウンから行われていた!
クラウンは、すでに15年前のゼロクラウン(12代目)から、積極的なユーザー若返り策を取ってきた。それまでブワンブワンだった足回りをスポーティに締め上げて(今思えば、それほどでもなかったが)、デザイン的にもかなりスポーティに変革した。
次の13代目のその正常進化版。そして14代目では、アスリート系にアッと驚くイナズマグリルを採用し、ショッキングピンクの限定車を販売。走りも適度にスポーティで適度に安楽で、文句をつけたくなるような部分はなかった。
なにせ、ルックスをあれだけ若々しく、インプレッシブに変更したのだ(アスリート系のみですが)。これなら新しいユーザー層を開拓できるんじゃないか? と本気で思いました。実は私、今でも先代アスリート系の顔のファンなのです!
こうしたクラウンの若返り策は、まったく無意味だったわけではなく、若干の高齢化抑止効果はあっただろう。つまり、この15年間で、放っておけばユーザー平均年齢が15歳高齢化するところを、12歳くらいに抑えたのかなぁ、と勝手に推測している。
■さまざまな若返り策を講じてきたが、おっさんイメージは覆せなかった!
しかし、根本的な部分を変えることは、ついにできなかった。これだけ頑張っても、クラウンのおっさんイメージは覆せなかった。それは、クラウンの長い歴史が、重い足かせになっているからだ。その事実を思い知るしかない。
例えばメルセデスといえば、だれがなんといおうと高級車というイメージだ。AクラスだろうがBクラスだろうが、ベンツの高級車イメージは1ミリも動かない。歴史の重みである。
一方BMWと言えば、間違いなくスポーティなイメージだ。2シリーズアクティブツアラーがいかにカピバラみたいなフォルムでも、顔を見ればBMWだとだれもが認識し、高速道路で道を譲ってくれる。これまた歴史の重みだ。
同様にクラウンと言えば、日本で最も保守的なセダンというイメージ。それは、なにをどうやっても、びくともしなかったのだ。
クラウンに乗るのは地方の社長さんに加えて、タクシーやハイヤー、パトカーに覆面パトカー。その構図は変わっていない。いずれも、ふんぞりかえった権力側というイメージである。そういうイメージが半世紀もの間、脈々と受け継がれてしまったらもう、それを変えるのは死ぬほどムズカシイ。
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