クラウンはおっさん向けと言われてしまう苦悩

■トヨタの危機感が15代目クラウンに反映されているが……

  しかしクラウンは、日本初の自主開発国産乗用車という、これまた歴史の重みがある。その重い歴史が、このままでは消滅してしまう。そのトヨタの危機感が、今度の15代目クラウンに反映されている。走りをニュルで鍛え、デザインもスポーティな6ライトに変更したのである! その効果か?  初期受注は好調で、発表から1か月で、月間販売目標台数である4500台の約7倍、3万台の受注があったという。

しかし私は、今度のクラウンには、従来のおっさんイメージを覆すだけのパワーはまったくなく、この調子は長続きしないと予想する。逆に今度のクラウンは、クラウンが出るたびに乗り替えてきた既納客からも、脱落者が多めに出るような気がしてならない。

その背景には、クラウンのような保守的イメージのセダンは、すでにユーザーの高齢化がいくところまでいっていて、「もうクラウンみたいな大きいクルマはムリ」と、ダウンサイジング化を図るユーザーが増えてくるはず、という予測があるわけだが、それにしても新型クラウンには、あまり魅力がない。

これまでクラウンは太いCピラーが採用されてきたが、歴代モデルで初めて6ライトウインドウを採用。新型クラウンの価格は2L直4ターボが460万6200〜559万4400円。2.5L直4ハイブリッドが497万8800〜579万9600円。3.5LV6ハイブリッドが623万7000〜718万7400円

欧州車で新型クラウンに近いフォルムを持っているのは、伝統的に6ライトウインドウを採用する新型アウディA6 

■ニュルブルクリンクで鍛えた足回りは必要か?

ニュルブルクリンクサーキットで鍛えた走りは、ワインディングを攻めれば確かに感じられるが、ユーザーが求めているのはそういうものではなく、漠然としたプラスイメージだろう。

「今度のクラウンはニュルで鍛えたから、BMWと競合できる」とはならないし、そっちの土俵で戦ってしまったら、逆に本場ドイツ勢には、イメージ的に太刀打ちできない。なにしろニュルはドイツにあるのだから。

デザインの完成度も高いとは言えず、ドイツ御三家と比べたら大差がある。別にユーザーは6ライトのスポーティなフォルムを求めているわけではなく、カッコいいほうがいい、というだけなのである。

並みいる欧州セダンと真っ向勝負するには、またユーザーの若返りにはニュルブルクリンクで鍛えた足回りが必要だった……

■アウディのスポーツバックやベンツCLSはカッコいい。新型クラウンは「おっさんの若作り」

同じ6ライトでも、アウディのスポーツバックシリーズは、間違いないカッコいいしエリートっぽい。メルセデスのCLSも、スタイリッシュなお金持ちというイメージが沸く。しかし新型クラウンを見て感じるのは、「オッサンの若作り」である。

これは全体としてのイメージで、どこがどう、と指摘するのはあまり意味がないが、あえて言えば、タイヤ位置が全体に前に移動したのに対して、6ライト化によってキャビンの位置は後ろ寄りに移動した。これでフォルムのバランスが微妙に狂った。

つまり、オッサンが若々しい服を着てみたけれど、センスがなくて似合ってないのである。無念。

昨年発表されたA7スポーツバックやベンツCLSなどは斬新かつ先進的なのだがクラウンは……

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