日本は災害大国でもあるが、そのなかでも特に恐ろしいのが地震だ。大きな揺れのみならず、津波や土砂崩れなど地震を起因とした災害も怖い。
万が一大きな地震が来た時、運転中だったらどうするべきだろうか? 今回は防災の専門家にアドバイスを聞いてみた。
文:和田隆昌(災害危機管理アドバイザー)/写真:ベストカー編集部
ベストカー2018年8月10日号
■一般道を走行していて地震がきたら?
運転中に大地震が発生した時、防災のマニュアルでは、最も適切な方法は「ハザードランプを出し、周囲を確認しつつスピードを落とし、路側帯等に車両を寄せて止まる」とされている。
もちろんそれ自体は間違っているわけではないが、実際にそのように冷静に行動できるのだろうか?
筆者自身も運転中に地震を経験したのは震度5強までだが、それでも横風を受けたような衝撃があり、数秒間、ハンドルをとられるような感覚に陥った。
道路が比較的空いていたこともあり、余震もなかったので無事に済んだのだが、これが震度6弱〜震度7になるといったいどうなるのだろうか。
そして、停車後にどのような行動をとるのが正しいのだろうか、過去の震災での事例を参考にして検証していきたい。
【一般道路を走行中の対処 (都市部)】
一般道路を40km/h程度で走行中に地震が発生した場合、追突事故などを起こさずに冷静に路側帯などにクルマを止められれば、停車した車内は建物内や屋外に比べても、安全な場所と考えられていて、その場にとどまるのは正解だ。
車内でラジオやスマートフォンなどで被害状況などの情報を入手したうえで次の行動を考えるべきなのだが、停車させる場所には注意したい。
高速道路の直下や橋脚の下、トンネル内、古いビルなどが道路間近に迫っているような場所は落下物による被害の可能性があり、過去の震災においても、車両内での死亡事故が発生しているからだ。
さらに都市部において問題なのは地震発生後、すぐに起きる大渋滞への対処だ。首都圏では、震度6弱以上が発生した場合には、警察は緊急車両を優先通行させるための交通規制や、幹線道路への車両の進入禁止措置が即座に発令されるため、渋滞はすぐに大規模に広がる。
さらに事故や火災の発生や、道路内への車両の乗り捨て、道路上への歩行者の立ち入りなどによって道路が駐車場化する。
警察は「震災発生時には車両を道路外に移動させ、ドアをロックさせず、キーを付けたまま、徒歩で避難しましょう」というが、どれだけの人がそのマニュアルに従うかは”?”である。
クルマを乗り捨てて避難する場合は、少なくとも幹線道路の路側帯に放置するのは大変な迷惑行為となるので避け、それ以外のスペースを探し、できるならば駐車場などに入れ、連絡先を書いたものをウインドウに明示するなどしてから徒歩で移動するというのがベストな選択だ。
【一般道路を走行中の対処 (郊外・山間部・沿岸部)】
郊外や豊かな自然のなかでの運転中に震災に遭った場合、都市部では考えられないような二次的災害に遭う可能性を想定しておかなければならない。
その典型的な例が、海岸沿いなどを走っていた場合である。安全にクルマを止められたならば、すぐに確認しなければならないのが「津波情報」。
震源地が内陸部ではなく、海溝などで発生した場合には津波被害の可能性を考えるべきだ。
気仙沼に住む自分の親類は、地震の後に海岸沿いを10分ほど走った後、内陸部にある自宅に戻ったため、ほんの数分の差で命拾いをした。
また熊本地震の発生後、熊本へ向けて山間部を走行中、数トンはあろうかと思われる岩が路上に無数に散乱しているのを発見した。
「地震の避難はクルマではなく徒歩で」の基本は場所によっては通用しない。
より安全な場所への移動の最善の手段がクルマであれば、迷うことなくクルマでより安全な場所へと移動することをお勧めする。
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