メルセデスが今シーズンに向けて送り出した新車W13。例年なら開幕2戦で飛び出して来るはずだが、レッドブルやフェラーリに先を超され、開幕2戦ではトップ争いどころかミッドフィールドをリードするのも容易ではなかった。一体どうしたのか? 元F1メカニックの津川哲夫氏がこの2戦を見て考察する。
文/津川哲夫、写真/Mercedes
開幕戦後に突貫工事でリアウイングを削ったが競争力は上がらなかった
開幕戦バーレーンで強いポーポシングに悩まされたW13は、1週間後に開催されたサウジアラビアではリアウイングのフラップ上部を切り欠いて幅を狭めたフラップを搭載してきた。サウジは高速サーキットでフロアからのダウンフォースは必須で、ポーポシングを抑えるのにライドハイトの調整での逃げを嫌い、リアウイングのダウンフォースを削ることで辻褄をあわせてきた。しかし応急処置でパフォーマンスを維持する事は叶わず、トップ2チームの後塵を浴びてしまった。
ゼロサイドポッドという斬新なアプローチゆえの苦しみ
W13は幾つかの斬新なアイデアを施して姿を現した。なんといっても目立つのは異形のサイドポッドで、ポッドに上面を設けずモノコックに思い切り引きつけて断面を台形状に絞り上げてきた。こうすることでフロアの上面空間面積を後方まで連続的に広くして、後方への空気流路を大きく確保し大量高速の空気流をリアウイング下面に送り、リアウイングとビームウイングでのエアロ効率の徹底向上が計られている。
さらに車体の前面投影面積の縮小で空気抵抗を減らし、トップスピードの向上を目指したのだろう。このために熱交換機器が大幅に見直され、水やオイル、油圧や電気系の冷却用ラジエターなどが大幅に変更されている。特に圧縮空気を冷却するインタークーラーが大きく改良され、小型高効率軽量化された熱交換器が採用されている。これにはロケットエンジンの冷却技術が使われているといわれている。
ゼロサイドポッドといわれるほど極端にナロー化されたためにポッド内のインターナルエアロも大きく見直され、冷却空気流路、排熱方法とその制御に工夫が凝らされた。前後のスリットルーバーは各サーキットでのセッション毎に微妙に調整され、現在その正解を探っているようだ。
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