乗車定員7人乗りのミニバンは大人1人と子供10人までOK? 【正しい乗車定員教えます】

乗車定員7人乗りのミニバンは大人1人と子供10人までOK? 【正しい乗車定員教えます】

 お盆休みのサービスエリアはミニバンが7~8割を占める状態だった。ふと見ると、3世代の家族で7、8人乗っていた。

 また、近所の川原にある野球場で練習試合があるというので、子供を送っていったらミニバンから小学生8人くらいがゾロゾロと出てきた。

 うん? この場合、7人乗りのミニバンに大人1人、子供8人って合法なのか? クルマの乗車定員ってどうなっているのか?  

 そこで、そもそも乗車定員に決まりってあるのか? モータージャーナリストの岩尾信哉氏が解説する。

文/岩尾信哉
写真/ベストカーweb編集部


■微妙な子供の「乗車定員」の規定

夏休みやGWの休みで友達家族と遠出する機会があるかもしれない。また子供が所属している野球やサッカーの試合のために自分の愛車のミニバンに何人まで乗せられるのか、悩んでいた人もいるかもしれない

 まずは、法律で子供たちを含めた乗員数がどう決められているのか、すなわち、全長が車両規定で3.3m以下になる軽自動車から5m近い大型ミニバンまで、家族で何人何人乗れるのか、チェックしてみよう。

 まずは乗員数はどう決められているのか確認してみると、道路運送車両法の保安基準の「乗車定員及び最大積載量」についての「第五十三条 2」で、乗車定員はこう規定されている。
「十二歳以上の者の数をもつて表すものとする。この場合において十二歳以上の者一人は、十二歳未満の小児又は幼児一・五人に相当するものとする。」

 子供(正確には乳児/幼児)の乗員数を計算するには、乗車定員から大人の乗員数を引いて、1.5かけた数字が子供の乗車定員となる。小数点以下の端数は切り捨てると、乗車できる人数となる。

 この規定には、すべての車種に当てはめようとするとグレーな部分が出てくるのだが、それは追って指摘していく。

■乗車定員5名のセダンは法律上は大人1名だと、子供は6人?

 まずは乗車定員5名のセダンから、子供は何人乗れるのか確認してみよう。一般的な5名乗車であれば、たとえば、大人2名だと、「5-2」で3、これに×1.5すると3.5となり、子供が乗車できる人数は3名ということになる。

 後席に3人子供が乗るのはなんとかなりそうと思われるかもしれないが、忘れてはいけないのが、法律で6歳未満の幼児用補助装置とされるチャイルドシートの取り付け義務があることだ。

 幼児の安全性を確保するために法律で義務づけられているチャイルドシート(ジュニアシートを含む)は、JAFでは大人用シートベルトの適合身長は140cm前後以上を推奨している。

 これを合わせると『6歳未満で身長が140cm以下』でチャイルドシートが必要となるのだが、年齢が6歳以下でも身長が140cm以上ならシートベルトを着用できるので、安全性は確保できるという、「年齢か、体格か」という“ダブルスタンダード”が生じてしまう。

 ちなみに、12歳以下の子供に使われるクッションなどで製作されたジュニアシートでは、適合年齢は3~10歳、身長は約100cm~150cm、体重が15kg~36kgといった想定があるが、6歳以上なら補助装置の装着義務がないというのも、どこか矛盾があるように思える。

■増える乗員にシートベルトが間に合わない?

2+3+3の8人乗りのステップワゴン。法律上では最大大人1人、子供10人乗れる。しかし人数分シートベルトは用意されていない

 いっぽう、5ナンバー枠に収まる“小型”ミニバンでは、シエンタやフリードといったモデルでは3列シートが設定されている例がある。大人2名が使う時には長時間の使用には耐えづらく、緊急的に使うというのが基本。“子供ならOK”というのは都合の良い言い訳で、子供たちから文句が出そうだ。

 対して、セレナやステップワゴンなどワンボックスに近い5ナンバー・ミニバンなら、シートの作りも含めて 後席の居心地はいくぶんか改善される。

  2列目をベンチシートとしたり、分割式のセパレートシートでもスライドができれば、中央部のシートベルトの設置方法の工夫によって乗り降りも含めた快適性をカバーするというのも、このクラスならある程度可能になる。

 8人乗り仕様が設定されているアルファード/ヴェルファイアといった“大型”ミニバンになれば室内空間 に余裕があるはいわずもがなだが、問題は乗車定員に余裕が生まれると、子供の乗員数が増えていく可能性が高くなること。子供はどれだけの人数の乗車が許されるのかという、新たな問題が生まれてくる。

 例えば、前述の乗車定員の規定によって単純計算すれば、こうなる。

 ●軽自動車(4人乗り):大人2名+子供3名、大人1名+子供4名

 ●5人乗り:大人1名+子供6名、大人2名+子供4名、大人3名+子供3名、大人4名+子供1名

 ●7人乗り:大人1名+子供9名、大人2名+子供7名、大人3名+子供6名、大人4名+子供4名、大人5名+子供3     名、大人6名+子供1名

 ●8人乗り:大人1名+子供10名、大人2名+子供9名、大人3名+子供7名、大人4名+子供6名、大人5名+子供4名、大人6名+子供3名、大人7名+子供1名

 ここでは助手席は1名乗車であることを考慮すれば物理的に無理があるような場合もあるが、5人乗りで大人1名+子供6名や、7人乗りで大人1名+子供9名や8人乗りでの大人1名+子供10名(まさに野球チームだ!)などが可能となると、本当にこれで規定はよいのかと思えてくる。

 ややこしいのは、道路交通法施行令の一部を改正する政令「第26条3の2第4項」の規定では、チャイルドシートに関して「その構造上幼児用補助装置を固定して用いることができない座席において幼児を乗車させるとき」「幼児用補助装置のすべてが固定できない場合」などでは、使用義務が免除されることだ。

 ともあれ、車両側のシートベルトの装備数が不足してしまい、きちんと安全に拘束できない子供が出てくるのは避けるべきだろう。

 こんな状況を変えるために法律を変えるとすれば、たとえば「1.5」の子供を計算するうえでの係数を乗車定員を減らすために「1.2」とし、見た目は判断しにくい子供の年齢の規定である 「12歳未満」を、シートベルトの装着が適正に可能とされる「身長140cm未満」に一本化するというのはどうだろうか。

 子供と年齢と身長は時代を経て変化していくものだから、適宜法律の修正で対応していく方法を模索することに意味はあるはずだ。

■グレーゾーンの解消を!

 乗車定員の意味合いが曖昧になってきたのは、軽自動車や小型車の室内空間が拡大してきたことも影響している。いまでは全高の高いボックススタイルのいわゆる“ハイトワゴン”の軽自動車であるN-BOXやタントなどでは、ベンチシートの採用など、使い勝手も含めて工夫が施されている。

 車幅の小型車の1695mmに対して軽自動車は1475mmと220mmの差があっても、小型車との室内幅の差もいまや30~40mmと狭まりつつあるのは、軽自動車のメーカーの開発陣の努力の成果といえる。

 ただし、軽自動車の乗車時に起こりうる乗車定員オーバーとなる「大人2名+子供3名」の場合については、現実的な判断が難しい。どうやら軽自動車の定員4名の規定について、警察では乗員数のチェック/取り締まりを実施しているようだが、具体的な内容について明確な答えは得られず、グレーな部分はあるようだ。

 法律を見ると、シートの数以上の乗員数、すなわち乗員がシーベルトを着用しないことを、道路運送車両法(第53条)では合法とする場合もある。

 車両の装備数が足りないためにシートベルトをしていない場合は厳密には道路交通法第71条の3の規定では基本的に違法だが、乗車数が定員内であれば、シートベルトの装着に関して、“シートベルト装備数以上の人数が乗車する際に”座席にシートベルトがない場合などでは着用が義務づけられない、例外規定が存在するので微妙な部分がある。

 このようにそれぞれの家族の事情もあるとはいえ、子供に関する安全を考える場合には、やはり乗車する人数はシートベルトの装備数に合わせなければ、合理的とはいえまい。

 法律は現実の後追いになるのは致し方ないが、今後は6歳から12歳という微妙な年齢が法律の規定のうえでどう扱われるか注目される。いずれにせよ、子供が「12歳未満であること」を確実に証明することが現実的でなければ、子供の体格を考慮したうえで、誰もが納得できるわかりやすい法改正を実施することには多くの賛同が得られるはずだ。

 このような対応策などをどのように捉えるのか、国土交通省に問い合わせてみた。回答はものの見事にあっさりとしていた。

「係数や乗員定数について検討する予定はありません。重量や規格などが異なる車両について、シートベルトなどの部品には個別に構造などで安全基準があり、乗員の安全性については実際の使われ方で判断します」という。

 確かに乗用車以外の車両はかなり“現場対応”の範囲が広いことは法律上の自由度と解釈してもよい。ただし、筆者が訊きたかったのは、乗用車の場合に乗員定数に適したシートの形状など、車両の安全性を確保するための「構造」についてではなく、乗員の状況をどう改善するか具体的な施策は講じないのかということだ。

 違反を取り締まるのは道交法の範疇だが、それを生み出す安全性に対するユーザーの知識あるいは認識の不足を補うのは、車両の基本成因を規定する側にあるだろう。車両の安全面については「自動車メーカーやユーザーがシートやチャイルドシートの使い方を考えればよい」というのは無責任とはいえまいか。

 前述のように道交法と道路運送車両法において、融通を利かしたある種の“緩さ”が必要なことは認めるとしても、ふたつの法律の間で安全面での最低限の“すりあわせ”が必要ではないか。

 現在の曖昧な状況が続けば、いつか多人数の子供が“委員定数”の範囲で事故に巻き込まれた際に誰が責任をとるのか、後の祭りとなってからでは遅すぎる。

「法律に適していればそれでよい」という解釈が現実の世界では通用しない事実を改めて問いただすのは、いかにも馬鹿馬鹿しすぎる。

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