ガソリンエンジンにとって大きな進化になりそうなのが、マツダが開発中のSKYACTIV-X。
圧縮着火をガソリンでも行い、究極の熱効率を実現しようというのがマツダの試みだ。もっと平たく言えば燃費を3割程度向上させ、トルクを1~3割ほど全域でアップ、そしてCO2排出量を下げる可能性を持つ。
まさにディーゼル車のようなガソリン車になるのだ。この新技術は試作車が公表されたのが2017年。そしてこのSKYACTIV-Xを搭載する新型アクセラは2018年12月のロサンゼルスショーで世界初披露され、2019年春に日本発売の予定。
期待の新技術、今後はどのように進むのだろうか?
文:鈴木直也/写真:ベストカー編集部
ベストカー2018年11月10日号
■夢のガソリンエンジン そのメリットと難しさ
マツダが”究極の内燃機関”として「HCCI」(予混合圧縮着火)技術を応用した次世代ガソリンエンジン、SKYACTIV─Xを開発していることを発表したのが、2017年8月。
圧縮着火といえばディーゼルだが、ガソリンでも同様の燃焼を実現できれば熱効率の向上が狙える。
とはいえ燃焼を安定させるのが難しく、実用化はかなり先と思われていたHCCIだが、マツダはスパークプラグを併用することで燃焼が安定することを発見し、次期アクセラで市販化一番乗りを目指している。
マツダでは燃費が現行ガソリンエンジン比20〜30%の向上、トルクを全域で10%以上最大で30%向上を目指す。
2LのロードスターRFなみの走行を1.5Lディーゼルのデミオと同等のCO2排出量で実現できるという。
このSKYACTIV-X、長年内燃機関技術者の夢といわれてきたHCCIの実現というテーマで、エンジニアリングマニアにとっては本当に夢のような圧縮着火。
だが、クルマとしてSKYACTIV-Xにどう付加価値を付けてゆくのか、そこに不安が残る。
そもそも、なんのためにHCCIを開発するのかといえば、いうまでもなく燃費の向上だが、そこには超えるべきライバルとしてトヨタのハイブリッド車が待ち構えている。
■コストアップを覚悟なら燃費もプリウス級が必須
SKYACTIV─Xは、高度な直噴制御、スーパーチャージャーなどの新たな補機類、さらには(おそらく)48Vハイブリッドシステムの採用など、これまでのSKYACTIV─Gよりコストアップ要因がいっぱい増えている。
そこまで凝ったことをやるなら、実用燃費でプリウスに迫る数字が出ないとキビシイ。
また、パワーフィールやドライバビリティについても、まだわからないことが多い。昨年試乗したプロトタイプは2L SCで190pps/23.5kgmというスペックだったが、エンジン単体でドライバーに強く訴求してくるようなものではなかった。
ただ、次期型アクセラの発売が来年なら、昨年の試作段階から飛躍的に完成度をもう高めてきているはず。
これまでのマツダの技術、意外に割安で出せていたことで成功したことが多く、クリーンディーゼルモデルもまさにそう。
従って現行ディーゼル車とそう変わらないくらいの値段でSKYACTIV-X搭載車を出してくるんじゃなかろうか。
日産のe-POWERもそうだったけど、技術的に白眉でなくてもヒットしたように、プレミアム車種にはしないくらいの値付けが重要になってくると思う。
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