果たして夏と冬のどっち寄りなのか? オールシーズンタイヤの今を現役プロドライバーが指南する!!

■夏寄り? 冬寄り? パターンと細かいサイプで見分ける!

オールシーズンタイヤは大きくふたつにパターンデザインが分かれる。Vシェイプとリブ基調で、左のVシェイプはどちらかというと冬性能重視、そして右のリブ基調は夏性能重視だ。
オールシーズンタイヤは大きくふたつにパターンデザインが分かれる。Vシェイプとリブ基調で、左のVシェイプはどちらかというと冬性能重視、そして右のリブ基調は夏性能重視だ。

 巷のオールシーズンタイヤを見回すと、大きくふたつにパターンデザインが分かれる。Vシェイプとリブ基調だ。Vシェイプはどちらかというと冬性能重視で、リブ基調は夏性能重視だ。

 Vシェイプは雪上ブレーキ性能に強みがある。制動時に溝のなかを雪が中心方向に凝縮され踏み固めることで、雪中せん断力=雪上グリップが増すのだ。同じ理由で前進よりも後退のほうでグリップが高く「進んでみたけどダメだ! 戻る!」という時にバックで戻れる可能性が高い。

 また、滑りやすいシャーベット路であってもVシェイプが効率的に排雪してグリップが得られやすい。しかし、その一方、騒音の原因となりやすく「ゴロゴロ」や「ウォーン」というロードノイズやピッチノイズが気になりやすい。

 そして、リブ基調は一般的な夏タイヤとも近いため騒音は出にくく快適性は高い。しかし、方向性がないため雪上ブレーキに強みがない。ということは「進んでみたけどダメだ!」となったら「戻れもしない!」ということになり得る。雪上性能はやや下がる方向だ。

 また、細かい溝=サイプの入り方も参考になる。サイプが多いほど圧雪に対してエッジ効果が増加し、グリップが上がる。サイプが多いほど冬寄りなのだ。一方、その場合はトレッドパタン剛性が下がるので舗装路での通常グリップ=夏性能は下がることになる。

 このように、「V字シェイプかリブ基調か」「サイプが多いか少ないか」この2点を見ればそのオールシーズンタイヤが冬寄りなのか夏寄りなのかはだいたいわかる。ではそれをどう選べばいいのだろうか?

■自分に合ったオールシーズンタイヤを選ぼう!

 まず、気をつけるべきは「アイスバーンなどの凍結路では、オールシーズンタイヤはスタッドレスタイヤに対して明確に劣る」ことだ。なので北海道はもちろん、東北などで圧雪アイスを走ることが多いならば避けるべき。

 同じ理由から、「冬はしょっちゅうスノボやスキーをしにゲレンデへ行くよ!」という場合もだ。スタッドレスタイヤを選ぼう。

 オールシーズンタイヤはそれ以外の、「念のためスタッドレスタイヤを履くが、実際雪道はほとんど走らない」「雪は降るが凍結しない。積もってもすぐ溶ける。」こんな人たちにお薦めだ。

「念のためのスタッドレス」だった人には夏寄りのオールシーズンタイヤをお薦めしたい。私が体験したなかでは某フランスメーカーのタイヤはそのへんの夏タイヤより高い夏性能で驚愕した。

 その分、冬性能はそこまで……だが、緊急回避的には充分に走れる。なんと言ってもスノーフレークマーク付き=ヨーロッパでは冬用タイヤとして認められているのだ。

「降っても凍結しない」地域では冬寄りのオールシーズンタイヤがお薦めだ。やっかいなシャーベット路では、溝の少ない氷重視の昨今のスタッドレス以上に性能が高い。新深雪においても排雪性の高さから悪くない。日系メーカーの製品はどちらかというとそうしたニーズを汲んでいると感じる。

 ちょっと前までは欧米系メーカーしか出していなかったオールシーズンタイヤだが、今は日系も、さらにはアジア系もラインナップに揃い始めた。やはり、歴史の長いメーカーの製品のほうが総合的な性能は高い傾向にあるが、値段という要素も絡んでくると悩ましい。

 悩みは尽きないが、ぜひ自分のカーライフに合った製品を選んで欲しいと思う。オールシーズンタイヤはかくも多様で難しい。しかし、選ぶ楽しさにあふれた製品なのだ。

ペンネーム:ハル中田 国内海外の開発事情にも詳しいプロドライバー兼エンジニア。レース経験や人間工学も踏まえたコックピット周りのデザインと走りの評価に一家言あり。サスペンションやタイヤに詳しく、ドイツのニュルブルクリンクを走るのが三度の飯より好きだとか。

【画像ギャラリー】いったい夏と冬のどっちを見てる? オールシーズンタイヤを写真でCHECK!!(6枚)画像ギャラリー

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