日産リーフや三菱i‒MIEV、テスラといったEVのパイオニアたちが先行しているなかで、VWはこれまで、ビートルベースのE‒バグスターやゴルフブルーe‒モーションを発表してきたが、市販化されることはなかった。
そして、ついにVWがEVの解答を出した。量産型EVのe‒up!である。年秋から欧州で市販されているが、日本では年中に導入が予定されている、期待の1台である。そのe‒up!が東京モーターショーのスマートモビリティ試乗会会場に2台あるという情報を聞きつけ、試乗を申し込んだ。撮影込みの1時間という短い時間、しかも速度をあまり出せないクローズドコースだった。試乗する前にe‒up!の概要を紹介しておこう。
ベースとなったのはup!の4ドアだが、当然、ボンネット下にはエンジンの変わりに82ps(60kw)/21.4kgmの電気モーターが収められ、前輪が駆動する仕組み。1ℓ3気筒ガソリンエンジンを搭載するup!が75ps/9.7kgmだからベースのガソリンより7ps/11.7kgm出力が高い。フロア下には、18.7hのリチウムイオンバッテリーが重量にして230kg、セルが204枚搭載されている。
そのほか変更点としては、細かいが最高強度の熱間成型鋼板の使用部位を8%から33%に拡大、電熱器のような役割を果たすEV用エアコン&ヒーターユニット、満充電で回生しない時のために制動遅れを防ぐ電気ブレーキブースターなどEV化に伴う専用品を装備している。
充電は200V電源からの満充電(8時間)での航続距離は160km。コンボ方式の急速充電器に対応しているが、30分で約80%の充電が可能だ。もちろん、日本に導入の際にはチャデモ方式にも対応させてくるはず。
e‒up!をさっそく走らせてみる。キーを回すとピコという音がした後、シフトレバーをDレンジに入れてアクセルオン。アクセルを踏んだ数秒後、「なんだこれは?」と思わず声を上げてしまうほどの静かさだ。加速中にどうしても出てしまうヒュイーンといった細かな高周波ノイズがまったく聞こえない。
しかも出足から感じる、背中を押されたような強大なトルク感。「高級サルーン並みの加速感と静粛性がリッタカークラスで実現」といえば、わかるだろうか?撮影する際に数センチ単位の微妙なアクセルワークをしたのだが、リニアに反応したのにも驚かされた。ハンドリングにしてもダイレクトでいつまでも乗っていたくなるほどの気持ちよさ、楽しさなのだ。
シフトレバーで回生ブレーキの作動量を3段階自由に変えられるところにも感心させられた。Dレンジから左がプラス、右がマイナスとまるでATのマニュアルモードのような感覚で、回生ブレーキの微調整ができるのだ。
シフトレバーの前にあるドライブモード選択スイッチも秀逸。ノーマルはだが、ECOを選択するとになり、エアコンの出力が抑えられ、加速性能が緩やかになる。ECO+にするとエアコンがオフになり燃費最優先のモードになる。
ドイツでの価格はエントリーグレードで2万6900ユーロ(130円換算で約350万円)。日産リーフが298万935円(補助金万円支給、実質220万935円)ということを考えると、300万円を切る価格で出してほしい。
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