アクアの将来が危うい理由 超人気車が消滅危機!?

アクアの将来が危うい理由 超人気車が消滅危機!?

2018年の登録車販売台数ランキングは、1位が日産 ノート、2位はトヨタ アクア、3位はトヨタ プリウスであった。

このうち、アクアは2011年12月の発売で、7年以上も経過したモデル。ノートも発売は2012年だが、1位になった背景には2016年に追加されたe-POWERの好調な売れ行きがある。3位のプリウスは2015年の発売で設計が新しい。

こうした点を踏まえると、それでも2位に入ったアクアは立派だ。過去を振り返れば、アクアは年間販売台数で軽自動車も含む“日本一”に輝いたベストセラーカーでもある。しかも、今でも登録車No.2の人気を誇っている。

にも関わらず、実は将来的に消滅する可能性が取り沙汰されている。なぜ人気車が姿を消す可能性があるのか? その背景を自動車評論家の渡辺陽一郎氏が解説する。

文:渡辺陽一郎
写真:編集部、TOYOTA


「7年選手」でもアクアが未だに売れる理由

e-POWER効果で首位こそノートに譲ったものの、2018年は登録車2位の売り上げを誇ったアクア。ユーザーの支持は未だに高い

アクアは2013年と2015年に、国内販売の総合1位に輝いた。2014年も登録車では1位。アクアは発売から時間を経過しても、販売順位をあまり下げない。

登録台数は2013年が26万2367台、2018年は12万6561台で半分以下に減ったが、ほかの車種も売れ行きを下げたため、登録車の販売ランキングでは、上位を保っている。

息の長い人気の理由は「5ナンバーサイズに収まるコンパクトなハイブリッド専用車」という位置づけにもあるだろう。ヴィッツもハイブリッドを追加したが、外観を見る限り、通常のガソリンエンジン搭載グレードと見分けにくい。ヴィッツにハイブリッド車のイメージは希薄だ。

対するアクアは、ガソリンエンジン仕様を持たないハイブリッド専用車だから、「ミニ・プリウス」的で優れた環境性能を周囲にアピールしやすい。

そこに魅力を感じるのは、個人ユーザーだけではない。例えば環境技術に力を入れる企業などは、社用車にアクアを使うと、企業のコンセプトと相性が良い。燃費性能が優れているから、ビジネスで長距離を頻繁に移動する用途にも適する。このほかレンタカーやカーシェアリング車両としても多く使われ、幅広いニーズに支えられて好調な売れ行きを維持している。

販売網も注目される。アクアはプリウスなどと同じくトヨタの4系列(トヨタ店/トヨペット店/トヨタカローラ店/ネッツトヨタ店)で扱われ、国内の店舗総数は4900箇所に達する。日産の2100箇所、ホンダの2200箇所と比べて2倍以上の規模だ。1か月に1台、各店舗がアクアを販売したり社用車で入れ替えれば、それだけで4900台になってしまう。

アクアの好調な売れ行きにはトヨタ特有の販売力もあるが、ユーザーの評判が衰えないことも事実だ。販売店からは「アクアに試乗していただくと、お客様は今でも加速力の高さに感心されます。プリウス譲りの外観とコンパクトなサイズの両立も魅力で、アクアのファンは多いです。初期型を下取りに出して、改良を受けた後期型を買うお客様もおられます」というコメントも聞く。

このようにアクアの人気は根強いが「現行型で消滅するのではないか」という見解もある。

「ヴィッツとキャラ被る」アクアに統合の可能性

「5ナンバーのコンパクトカー」という点でアクアに近い現行型ヴィッツ。当初はガソリン車のみだったが、2017年のハイブリッド車追加で、両車のキャラはより接近した印象だ

アクアの発売は先に述べた2011年、ヴィッツは2010年だから、長い期間が経過した。

ヴィッツは2019年中にフルモデルチェンジを行う模様だ。車名は国内でも欧州や北米と同じ「ヤリス」を名乗る可能性が高い。その一方で、アクアを終了する可能性があるという。

アクアは日本と北米(車名はプリウスC)で販売しているが、欧州のドイツやイギリスでは扱っていない。欧州のコンパクトカーは、ヤリス(日本名:ヴィッツ)と、さらに小さなアイゴをそろえる。

そのため、アクアの2017年世界販売台数は14万9300台で、内訳は日本が13万1600台と圧倒的に多い。北米は1万4700台、ほかの地域は3000台と少ない。

対してヤリス&ヴィッツハイブリッドは、日本は2万7900台(ガソリンエンジン車を除く)だが、欧州では10万900台に達する。日本と欧州を合計すれば、ハイブリッドモデルだけでアクアと同等の台数を売っているのだ。

つまり、アクアは実質的に国内専用モデルになる。国内のヴィッツは2019年中に行われるフルモデルチェンジで車名をヤリスに変更し、アクアは統合される可能性がある。

次ページは : アクアがヤリスに吸収!? 背景にはトヨタの戦略も関係

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