セレナは2018年4月~2019年3月の1年間で100,017台売れ、ミニバンジャンルで2018年度の販売台数トップを記録した。乗用車の総合ランキングでも4位にランクイン。同車の前年度比で1.2倍も販売台数が伸びたのだ。年度内で10万台以上販売するのはセレナ史上はじめてのことだとか。セレナは、いったいどこがすごくて日本一のミニバンになったのか。
元日産エンジニアの自動車ライター、吉川賢一氏にその勝因と事情を分析していただいた。
文:吉川賢一
■e-POWER追加の衝撃
日産セレナが売れた最大の要因は、2018年3月に追加となったセレナe-POWERにある。
ノートに続くe-POWER第2弾として日産が選んだのが主力ミニバンのセレナだった。セレナはノートと並び、日産の国内販売台数をけん引する重要な役目を担っており、このセレナへe-POWERを設定したのは結果的に大正解であった。
発電に特化させたガソリンエンジンを使って発電機を回し、その電力を利用してモーターを駆動させることで走行するe-POWER。通常仕様と同じく給油口からガソリンを入れるため、リーフのように充電口はない。このシステムのおかげで従来のセレナ・グレードXの燃費17.2km/L(JC08モード)をはるかに凌駕し、セレナe-POWERはクラストップの低燃費26.2km/Lを達成している(2019年4月時点)。
価格もアドバンテージがある。ガソリン仕様の「X」グレードが約250万円(税込)なのに対して、e-POWERは47万円ほど上がる約297万円(Xグレード)ではあるが、それでもホンダ・ステップワゴンハイブリッドB(約330万円~)や、トヨタ・ヴォクシーハイブリッドX(約300万円~)と比べれば、お買い得だと言える。
■追加された新機能が好評
ノートe-POWERで評判がよかったSモード、通称「ワンペダル」は、もちろんセレナe-POWERにも搭載されている。アクセルペダルを戻せば強めの回生充電が開始され、減速エネルギーを使って駆動用電池に電気を積極的に蓄えることができる。アクセルペダルだけでも発進から停止状態まで操作が可能なため、ペダルを踏みかえる必要性が少なくなるぶん、運転時の疲労を低減することが可能である。
筆者がセレナe-POWERでワンペダルを体験した際は、疲労が低減されるだけでなく、加減速にメリハリをつけることができるために、「運転操作が楽しい」という印象を受けた。
さらにセレナe-POWERで追加されたのが 「マナーモード」という(発電用のエンジンを動かさない)EVのみで走行を行う機能だ。駐車時や、特に静かに走りたいときに役立つ機能で、現時点だとノートe-POWERには搭載されていない。
■e-POWERの専用の内外装デザイン
セレナe-POWERは外観にも若干の変更があった。ブルーの専用グリル、切削加工を施した15インチアルミホイール、内装は、2列目にキャプテンシートを装着。両側にアームレストが備えており、従来のベンチシートとは異なるシートとなった。
ただし、従来のセレナにはあった2列目中央席の前後移動がなくなっている。e-POWERはフロントシート(運転席・助手席)の下に、駆動用リチウムイオン電池を搭載するためだ。特徴的で便利な機能だったので少し残念だ。乗車定員は従来仕様のベンチシート8人乗りに対し、e-POWERは7人乗りである。
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