三菱新型eKクロスは軽の世界に旋風を巻き起こせるか

 約6年ぶりのフルモデルチェンジとなった三菱自動車の新型軽自動車eKワゴン。その派生車として登場した「eK X(クロス)」が話題となっている。兄弟車である日産デイズとともに、製品開発は主に日産、生産プロセスは主に三菱が行う、という2社の分業で生まれたクルマだ。双方とも、協業によるメリットを享受できたことだろう。

 実は筆者(吉川賢一)は先代の日産デイズを所有している。今回、新型eKワゴン/eKクロスに試乗することができたので、先代の日産デイズと比較しつつ、元メーカー開発エンジニアの立場で、忖度なく意見を述べたい。

文:吉川賢一(=日産自動車で11年間、次世代車の操縦安定性-乗り心地の先行開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発にも従事。「エンジニア視点での本音のクルマ評価」モットーに、モータージャーナリストへのキャリアを目指している)
写真:平野学


■先代までのデイズ&eKワゴンからどのように進化しているか?

 全長は維持したまま、前輪の位置を65mmも前出ししてホイールベースを延長(2495mm化)、そのぶんドライバー位置を前進。前後スライドが可能なリアシートを最後端にすれば、余裕で足が組めるほど、後席のニースペースを拡大させた。

三菱eKクロス主要諸元 (2WD「G」) /全長3395×全幅1475×全高1640mm、ホイールベース2495mm、最低地上高155mm、車両重量850kg、JC08モード燃費29.4km/L、WLTCモード燃費21.0km/L、車両本体価格155万円

 刷新した新型エンジンはNAとハイブリッド、そしてターボ付ハイブリッドの3種類を用意、ミッションは全グレードCVT、それぞれに2WD/4WD設定があるが、ハイブリッドとターボ付ハイブリッドはeKクロスのみの設定である。

 このハイブリッドは、いわゆる「マイルドハイブリッド」なので、アイドルストップと加速時のアシスト程度と考えたほうが良い。ただ、試乗前に行われたプレゼンで、開発担当者から「エンジン改良によって全回転域でトルクが増した」と説明があったとおり、確かに普段使うような走行シーンで、加速がしやすく感じられた。

写真左が標準仕様のeKワゴン。こちらはNAのみのラインアップとなる。いっぽうeKクロスはハイブリッド仕様のNAとターボが用意されている

 また、段階的にステップを切ることで加速音量を下げる「可変速CVT」も搭載、アクセルを踏んでもエンジンが唸るだけで加速がついてこない先代のエンジンと比べ、若干だが、静粛性は増したように感じる。

 また先代のプアな直進性も、ステアリングのハンドル戻り制御の効果か、真っすぐに走りやすくなった。さらには、ミツビシ車へ初搭載となった「MI-PILOT」こと日産の「プロパイロット」によって、走行中の高い安心感を実現している。

■この手の軽自動車にとって重要なポイントは

 車室内の広さや燃費の良さ、諸費用含む維持費の安さを目的で軽自動車を買うのは、すでに時代遅れとなっているのかもしれない。eKワゴン/eKクロスのCPSチームも、「お客様が軽自動車を選ぶ基準がこの10年で変わってきた。2008年ごろは諸経費の安さや車両価格だったが、2018年は車体色、スタイルなど、魅力に関するキーワードが上位にある」と説明している。まったく同感である。

豊富なカラーバリエーションや室内の快適性、見栄えのよさなど、「軽に求められる性能」が変わってきている

 お客様は、「クルマの本質=日々を楽しく過ごす手伝いをしてくれる道具」と考えているのではないだろうか。そのうえで今は、そのクルマが「軽」だということをそれほど意識せず、そのお客様方の「承認欲求」にどれだけマッチするのか、ということが重要になってきていると筆者は推測する。

 その求める先として、エクステリアデザインだったり、ボディカラーだったり、おしゃれな内装などが優先事項になってきていると感じる。いわゆる「SNS映え」である。

■それは、この新型はどの程度達成できているか?

 eKクロスのフロントフェイスのインパクトは強烈だ。「ダイナミックシールド」と呼ぶフェイスのモチーフは、デリカD:5と共通である。好き嫌いはあるだろうが、デリカD:5を1回りほど小さくした様な、「プチデリカ」感が、筆者にはなんとも「カッコ可愛い」と見えた。

 さらには、ボディカラーはモノトーンに加えて、2トーン色も5パターン導入、しかもボディ色毎にルーフ色を変える等、カラーデザイナーのこだわりと、ミツビシの生産工程のフレキシビリティさが、全力で発揮されている。

 お客様の好みに合わせたカスタマイズやスペシャリティ感を出し、魅力訴求する足場作りはうまくいったと考えられる。

後席の、特に足元の広さは驚異的。シートスライドと分割可倒式の背もたれで、細かい使い勝手は非常に高性能。クルマに詳しくない家族を乗せたら一発で「これがいい」と言われそうな快適さ

 また、インパネやメーター、スタリングスイッチやエアコンなど、インテリアの質感は、もはやこれまでの軽自動車の水準ではない。細かなパーツのつくり込みも秀逸で、ダッシュボードなどのプラスチック感も少なく、下手なコンパクトカーなど勝負にならないであろう。手の届くあらゆるところに収納スペースが仕込まれており、ユーティリティも非常に高い。

全車ベンチシートのインパネシフト。先進安全装備「MI-PILOT(日産でいうところのプロパイロット)」を装備できる。またセンターコンソール上部に大型モニターを装着できるところも非常に現代的

■この「顔」とeKクロスというコンセプトは

 この独特すぎる「eKクロス」の方向性は、「いいところをついている」と筆者は感じる。あえてこのクルマを選びたくなるという「スペシャリティカー」としての認知が進み、存在感を際立たせることができれば、eKワゴン/eKクロスの月販売目標4000台をはるかに超えて、大化けするかもしれない。期待が持てる一台である。

リアデザインはeKワゴン、クロスともに共通

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