クルマのデザインは面白い。顔(フロントマスク)、お尻(テール)、リアウイングなどの空力負荷物、プロポーション、トータルバランスなどなどさまざまなアピールの仕方がある。
存在感をアピールするといえば前後のフェンダーもそのアイテムのひとつとなる。
ボルトやリベットで後付けされたオーバーフェンダー、グラマラスに膨らんだブリスターフェンダー、レーシングマシンをほうふつとさせるサイクルフェンダーなど、フェンダーひとつとってもいろいろな種類があり、それが個性にもつながっている。
基本的にオーバーフェンダーやブリスターフェンダーを採用する理由は、できるだけ太いタイヤを履きたいから。保安基準ではタイヤはボディから外側に突出してはいけない、という条項を満たすためだ。
そのため、高性能スポーツが多くなるが、そうでないモデルも存在する。特徴的なフェンダーを持った日本車を集めてみた。
文:ベストカーWeb編集部/写真:NISSAN、MITSUBISHI、SUBARU、DAIHATSU、MITSUOKA、奥隅圭之、茂呂幸正
後付けのオーバーフェンダー
市販車をベースにレーシングマシンに仕立てる場合、より太いタイヤを履くために後付けのオーバーフェンダーが装着されるのは常套手段だ。
日本でオーバーフェンダーが高性能かつカッコいいというイメージを植え付けたのは1971年にデビューした日産フェアレディ240ZGだろう。
日本車で初めて後付けのオーバーフェンダーを装着したのは1970年デビューの日産スカイラインGT-Rだったが、こちらがリアのみに対し、240ZGは前後にブラックのオーバーフェンダーをリベット止めして精悍さをアピールし、当時のクルマ好きを魅了した。
もう1台挙げるとすれば、1972年にデビューしたトヨタカローラレビン(TE27)だろう。240ZG同様にリベット止めオバフェンがカッコよかった。
この時期は後付けオーバーフェンダーは高性能の証として認知されあこがれの対象となっていたが、後付けのオーバーフェンダーは暴走行為などの遠因になる、との判断により1974年にいったん禁止と、かなり短命だった。
ちなみに現在は後付けオーバーフェンダーは、両面テープでは強度が確保できないためリベットまたはビス止めなら許可されている。
ただし、保安基準により拡幅が許可されているのは2cm未満。それを超える場合は構造変更申請が必要になる。軽自動車は1480mm以内、小型自動車(5ナンバー)は1700mm以下、普通車(3ナンバー)は2500mm以内という規定があるため、それを超える場合は登録の変更も必要になってくる。
ブリスターフェンダー
後付けのオーバーフェンダーが禁止後登場し始めたのがブリスターフェンダーだ。ブリスターとは膨らんでいるという意味のとおり、グラマラスな形状が特徴だ。
ただし、アフターに関していえば、簡単に後付けできるオーバーフェンダーとは違い、フェンダーそのものを交換する必要があるため手軽感ない。そういう意味ではマニア向けだ。
自動車メーカーが標準で採用したブリスターフェンダーでまず外せないのが、1987年にわずか50台限定で販売されたワイドボディを採用した三菱スタリオンGSR-VRだ(1988年にエンジンを2.6Lに換装した2.6GSR-VRがカタログモデルとなる)。
GSR-VRは、標準ボディが全幅1695mmに対し、50mmワイドの1745mmだった。当時は今と違い日本車にとって1700mmの壁はとてつもなく高かった時代だったからそのインパクトは絶大だった。片側25mmとは思えない迫力に目を奪われたものだ。
もう1台は、スバルが1995~1997年にかけてWRCで3連覇を達成したのを記念して発売されたスバルインプレッサ22Bだ。WRカーのインプレッサWRC97をモチーフとしたデザインを採用し、400台限定で500万円があっという間に完売したエピソードもある。
スタリオンが仰々しく目立つ形状のブリスターフェンダーだったのに対し、パッと見では膨らんでいるのがわからないくらいなめらかな形状だったのが特徴で、特にリアフェンダーが美しかった。インプレッサに対し全幅が80mm拡大された1770mmを誇った。
意外なブリスターフェンダー採用モデルもある。2016年にオーテックジャパンの30周年を記念して限定販売されたマーチボレロA30だ。365万4000円とマーチとしては高額ながら速攻で完売。
オーテックが手掛けるカタログモデルのボレロをベースに、エンジン換装などオーテックの匠の業が注入されているのだが、圧巻は全幅を1810mmまで拡幅したワイドボディを採用していることだ。ノーマルマーチに比べて全幅は145㎜もワイド!
ここまで拡幅していれば、パッと見で只者じゃない感がアリアリなのだが、限定台数はわずか30台なので、街中で見かけることはまずないのが残念。
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