外環道や圏央道……[シールドトンネル工事]で重大事故が多発しているのはなぜなのか?【清水草一の道路ニュース】

■時期的な要因があった工事費の膨張

 工事費の膨張も問題だ。東京外環道に関しては、2009年の段階では1兆2820億円の予定だったが、2016年の事業見直しで1兆6000億円になり、2020年にはさらに増えて2兆3575億円になった。

 しかもこの金額は、陥没事故直前の試算。現在は開通できるかどうかもわからないが、開通できても、さらなる膨張は確実だろう(圏央道南側区間は1兆420億円→1兆3620億円へ3200億円増加)。

 これらの事故が起きる直前、2015年に全線開通した首都高C2品川線は、五反田出入口の出水事故で開通が1年遅れたものの、シールドトンネル工事は順調に進み、技術の改良によって工事費の大幅削減にも成功している。当初4000億円の予定だった事業費は、最終的に3019億円まで縮減された。

 栄光の時代を迎えたかと思われた日本のシールドトンネル工事に、いったい何が起きているのだろう。

圏央道南側区間のシールドトンネルイメージ図。現在のところ開通予定年度は発表されていない
圏央道南側区間のシールドトンネルイメージ図。現在のところ開通予定年度は発表されていない

 工事費の膨張については、時期的な要因もある。

 C2品川線が着工されたのは、道路四公団が民営化された直後の2006年。談合が排除されたうえ、技術の改良によるコストダウンに対してインセンティブ制度が導入され、着工後もゼネコン側がコストダウン策を模索する動機が生まれた。

 この時期は、公共事業削減の最盛期で、大手ゼネコンは仕事がなく困っていた。C2品川線の競争入札では、予定価額の約6割という安値入札が発生するなど、ダンピング合戦状態になっていた。

 にもかかわらず、工事がしっかり行われたのは、日本の建設業界が蓄積してきた職人芸がしっかり注入されたからだろう。現場を取材するたびに、困難な工事に立ち向かう彼らの仕事ぶりに敬服するしかなかった。

 一方、圏央道南側区間や東京外環道のシールドトンネル工事で重大事故が起きたのは、状況が当時とは真逆になったことが関係しているのではないだろうか。

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