トヨタ春闘満額回答…も「兜の緒」絞めまくりなトヨタらしすぎる危機感と当事者意識

トヨタ春闘満額回答…も「兜の緒」絞めまくりなトヨタらしすぎる危機感と当事者意識

 2025年3月12日、トヨタ自動車は愛知県内で記者会見を開き、組合側からの要求に満額回答を発表。要求は過去最高水準となった昨年と同じ9950~2万4450円の給与アップ(平均水準は未発表、職種と職位によって変動するが会社側が支払う総額は満額)と7.6カ月ぶんの賞与で、トヨタは5年連続の満額回答となる。そのうえで、会見で語られたのはいかにもトヨタらしい危機感と当事者意識だった。

文:ベストカーWeb編集部、画像:Adobe Stock(@Björn Wylezich)、会見動画からスクリーンショット

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「パンドラの箱を開けた気分」

「トヨタ自動車7万人の従業員全員の月給を1万円ずつ上げるとなると、20年で2000億円くらいになる(人件費がそれだけ増加する)。業界全体が大きく変化し、先行きが不透明で、リスクもあるなか、今後20年で2000億円以上稼げるのか、経営側も労働者側も、その【覚悟】が問われる労使交渉でした」

 会見に登壇したトヨタ自動車総務・人事本部本部長の東崇徳氏は今回の春闘を上記のように振り返った。

 今期のトヨタの業績は引き続き絶好調、ひとり勝ちといえる。今年(2025年)2月に発表された今年度(2025年3月期)の通期業績見通しは、売上高が前年度比4.2%増の47兆円、営業利益は同12.2%減の4兆7000億円、当期純利益が同8.6%減の4兆5200億円を見込む。前期と比べると増収減益となるが、それでもこのご時世に純利益4.5兆円は凄まじい業績といえる。

 それでもトヨタ自動車の佐藤恒治社長は、「最大のリスクは【トヨタは大丈夫】という慢心である」という豊田章男会長の発言を引きつつ、「もしトヨタが危機感や当事者意識を失ってしまったら、一瞬で普通の会社になってしまうだろう」と語った。

 5年連続となる満額回答、過去最高水準となった昨年度と同額アップ。成長を続けるなかで伸びてゆく固定費(人件費)について、東本部長は「根雪のように積もってゆくものを、本当に回収できるのか」と、労使交渉の苦しさを語った。

会見に登壇するトヨタ総務・人事本部本部長、東崇徳氏
会見に登壇するトヨタ総務・人事本部本部長、東崇徳氏

 上記のような危機感と当事者意識を背景に、今回の労使交渉と満額回答を踏まえて、トヨタはふたつの人事・給与制度の変革プランを発表した。

1.各本部・カンパニーでの年間を通じた全員参加の話し合い
■本部長/プレジデントが“出された職場課題・困りごと”について現地現物で判断し、一つひとつ解決
 →全社で進捗を確認する場を7月・ 11月ごろに設定

2.個人の成果や職場への貢献に向けて“行動する人”を後押しする仕組み/制度
①個の力を引き出す仕組み・制度【10月目途 】
・全職種・資格での役割に応じたメリハリのつく評価(賞与加点幅の拡大や資格の原資を超えた配分等
・技能職の人事制度見直し(職種や手当の再編、スタッフ系昇格の明確化等)
・新たに加わるメンバーの立ち上がりサポート(職場先輩の役割明確化と配置徹底、派遣社員含めた受入HP立上等の研修の充実)
②個と職場に本気で向き合うマネジメントの育成【6月目途 】
・配置前の研修新設と職場実践で改善に繋げるサイクルを導入
・脱一律の制度を運用していくための、対話力や評価・フィードバックスキルの改善支援
⇒労使専門委員会で、制度詳細や他に必要な取り組みについて議論

 つまり、これまで細かく決まっていた事務職・技術職・業務職それぞれの枠組み内での手当てや職位、それに応じた給与・賞与制度を、より実態に合わせるため抜本的に見直し、従業員ひとりひとり、やった仕事、業績に見合った給与・賞与制度を今年いっぱい使って立ち上げる、とのこと。

 より時代と実態に合わせるかたちではあるが、7万人ぶんの評価制度を見直すわけで、めちゃくちゃ大がかりな制度設計の見直しとなるだろう。「パンドラの箱を開けた気分」(東本部長)という発言があったが、気持ちはよくわかる。

 ちなみに東本部長によると、豊田章男会長はこの制度見直し案の報告を受けて、「やってごらんよ、二回目からはうまくいかないと思うけど(苦笑)」と語ったとのこと。「上ばかり見ていないでちゃんと下と向き合うと、その大変さがよくわかるぞ、一朝一夕にはいかないからな、という叱咤激励と受け取った」(東本部長)とのこと。ポジティブ! 話し合いがうまく進めば、2025年度の冬賞与、2026年度の給与から反映されるという。

 正直、春闘の労使交渉会見って退屈だろうな、業績も好調だし満額回答シャンシャンで終わりでしょう、と思って参加したわけだが、ガチの殴り合いのあと双方を讃え合って成長を約束する…みたいな少年マンガを見たような会見でした。

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