2023年12月、日本製鉄はアメリカの鉄鋼大手、USスチールを買収すると発表。双方が望んだ買収劇……のはずだったが、当時の大統領であるバイデン氏が反対。日本製鉄はこれを不服として提訴したが、これは日産と鴻海、そして日本政府の関係に似ていないか!?
※本稿は2025年1月のものです
文:国沢光宏/写真:日産、AdobeStock(トップ画像=nordroden@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2025年2月26日号
前代未聞! 日本企業がアメリカ大統領を提訴
驚くべきことに日本製鉄は、アメリカ政府とアメリカ人が“ほぼ”直接選んだ大統領に対する訴訟を起こした。もちろん訴えることは可能ながら、日本の民間企業がアメリカ大統領を訴えることなど今まで皆無だった。
訴訟の内容は「民間の取引に大統領が関わるな!」というもの。日本製鉄がアメリカのUSスチールを買収しようとしていたのをアメリカ政府によって妨害されたという。
参考までに書いておくと、かつては大手だったUSスチールながら、ここにきて低迷。日産をイメージしていただければ間違いない。
USスチールの経営陣はこのままだと財政破綻するため、日本製鉄の傘下に入りたいという意思を持っていた。アメリカ政府や大統領が介入しなければ買収できたと思う。
しかし! 反対する勢力もいるし、そもそもアメリカとしてUSスチールの買収を防ぎたい。
これまた日産と似ている。日産は台湾の鴻海に買収されそうになり、経産省が動いて阻止しようとしている。やっていることはアメリカ政府と同じ。日産もUSスチールも、国家からすれば自国に残したいということなんだと思う。
こういったケース、普通なら買収しようとする側が諦める。考えていただきたい。鴻海が日本政府を訴えたらどうか? 鴻海のイメージダウンだけに留まらない。
台湾にも日本にも「右派」と呼ばれる皆さんやメディアがいる。台湾の右派から「日本政府けしからん!」とバッシングされたら、日本人の右派としちゃ面白くないことだろう。
ましてや今回はアメリカの精神でもある大統領を訴えるということまでしている。実際、すでに日本の右派は「商取引をジャマするのはけしからん!」みたいな雰囲気になっている。これをアメリカの右派メディアが取り上げたらアメリカだって黙ってない。
かつて日本の自動車産業はアメリカから厳しい厳しい輸出規制を強いられ、結果的に巨額の投資をしてアメリカに工場を作らざるを得なくなった。その時もアメリカ大統領を訴えるなんていう暴挙には出ていない。
国と国の問題は、対等に話ができる部門で解決し、それでもダメなら、国際紛争を取り上げる機構に持ち込む。国民感情に大きな影響を与える皇族や王族、大統領を訴えることなどあり得ない。訴えても国が動く。
今回起こした日本製鉄の訴訟、国際的な問題を扱う人に聞くと口を揃えて「勝てるワケない」という。日本に対する悪いイメージだけ残して終わりになってしまうようなら、国として損。あまり騒ぐと日本全体のイメージダウンになってしまう。
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コメント
コメントの使い方バイデン政権が日本製鉄にけしかけ、トランプ政権に喧嘩を売っているという構図ですね。
日本にとって百害あって一利なしです。