質疑応答ハイライト——JMSの手応え
今回の会見では、数字の裏側にある“現場の手触り”が随所ににじんだ。特に顕著だったのが質疑応答。
「残価が高く補修も強いのは昔から。それでも2020年から2025年にかけてバリューチェーンによる利益は2倍近くに伸びている。決定打は何か」との記者からの質問に対して、近CFOの回答は以下のとおり。
「豊田章男会長の旗振りにより、2017~18年ごろから“保有の力”を総合的に強化してきた。開発初期からサービスが関与し、直しやすい設計・部品供給の磨き込みを徹底。欧州で顧客接点(保証延長、メンテパック、デジタル接点)を再整理し、好事例をグローバルに横展開。高い残価が次の買い替えを後押しし、金融タッチポイントも増やすことで、収益が階段状に積み上がった」
——という説明だ。要するに、単発のヒットではなく、設計×販売×サービス×金融を通した“面の強化”が効いている。
またジャパンモビリティショーに多くの観客が訪れていることについて、近CFOは「多くのお客様が楽しそうにクルマをご覧になっていた。チームもお客様の笑顔に元気をもらった。社内のモチベーションが上がり、今後の商品づくり・ブランドづくりへの追い風になる」と回答。「センチュリー」ブランドの立ち上げについても触れた。
財務の会見であえて“楽しさ”を語ったのは象徴的で、5ブランド体制による“選べる楽しさ”の拡張とも響き合う。数字の先にある体験価値を拡張すること——これが、価格ではなく価値で選ばれるための最短距離だというメッセージと受け取った。
このほか、半導体の個別リスク(特定サプライヤー)については、現時点の顕在化は限定的だが部位ごとに影響を棚卸し、代替の可否を確認中とした。仕入先基盤の強化と工程の見直しを並行して進めることで、関税・コスト増の二正面作戦に備える。
まとめ
米国関税ショックによる大外乱のただ中で、トヨタは値上げせず、「価値で稼ぐ」を正面から貫く方針。HVを主軸に実需へ合わせ、ブランドの地図を描き直し、保有1.5億台が生むVCの循環で収益を厚くする。
地域分散の収益構造と在庫タイト・低インセンという良い需給が、通期3.4兆円のハードルを現実的にする。ジャパンモビリティショーで可視化された“楽しさの熱量”は、単なるお祭りではなく、商品とブランドの推進力となっている。
最後に「日米の自動車格差解消の一環として【米国産トヨタ車を日本へ輸入する】という報道があったが可能性は?」という質問が記者からあったが、「先方(日本政府? 米国政府?)からお願いがあれば、そういう選択肢もある、という話だと理解している。現時点ではまだそうした要請は受けていないという認識」とのこと。
カムリとかシエナとかタコマとか、米国産トヨタ車を入れたら売れそうな気がするが……。いずれにせよトヨタの盤石さが際立った会見でした。
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