2025年11月6日、日産自動車が2025年度上半期(第2四半期)決算を発表した。連結売上高は約5.6兆円、営業損失277億円、当期純損失2,219億円と厳しい数字だった。一方で第2四半期は営業利益515億円と黒字を確保し、北米の持ち直しと中国「N7」効果で底入れの兆しが出た。流動性は約3.6兆円(現金同等物約2.2兆円)と“守り”を厚くしつつ、改革プラン「Re:Nissan」で固定費800億円超を削減。通期は関税影響を除けば損益均衡の見通しだ。以下、本記事では、自動車情報専門メディアとして、数字と概況、商品戦略の各方面から、日産自動車の現状と今後の見通しを確認したい。
文:ベストカーWeb編集部、画像:日産自動車、自工会(本記事アイキャッチ写真はJMS2025記者会見で新型エルグランドを熱くプレゼンする日産イヴァン・エスピノーサCEO)
【画像ギャラリー】日産2025上期決算会見の全画像と資料と鍵を握る新型エルグランド(31枚)画像ギャラリー「関税除き損益均衡」へ――削る守りと攻める新型の両建て
まずは今回発表された、日産自動車の2025年度上半期(4–9月)決算の輪郭をおさえたい。連結売上高は約5.6兆円、営業損失277億円、当期純損失2,219億円、グローバル販売は148万台。為替と関税が逆風となったほか、構造改革費用の影響が重かった。
ただし四半期ベースでは7–9月期(第2四半期)の営業利益が515億円と黒字に転じ、北米の台数・ミックス改善、中国は新型「N7」の寄与で回復の糸口が見えている。会社側は研究開発費の優先順位付けにより、投資の質を落とさずメリハリをつける方針を示した。
日産は状況が状況だけに財務への説明が丁寧だったが、細かく見ていくと資金面の体力は充分あるように見える。9月末の自動車事業の現金・同等物は約2.2兆円、未使用コミットメント等を含めた自動車・販売金融を合わせた流動性は約3.6兆円。社債や転換社債で年限・通貨を分散しながら機動的に調達した。会社側は「下期の自動車事業フリーキャッシュフローはプラス転換」を明言し、今年度末の自動車事業ネットキャッシュ1兆円級を視野に入れる。過去の再建局面と比べて“守りの構え”は厚い。
昨年度決算が出たあたりでは経済専門メディアから「日産消滅」など刺激的な見出しがあり、それにともない日本市場での販売にも影響が出たが(時期的に新車商品が薄い時期であったこともあり苦戦したが)、上期が締まった段階でグローバル販売と財務状況を見ると、順風満帆とはいかないが、すくなくともまだ体力はあり、新車の準備も含めて企業体質は上向きに進んでいることがわかる。
イヴァン・エスピノーサCEOが進める再建プラン「Re:Nissan」は、①コスト構造の改善、②市場・商品戦略の再定義、③パートナーシップ強化の三本柱。コストでは2026年度末までに固定費2,500億円、変動費2,500億円の合計5,000億円削減を掲げ、上期だけで固定費800億円超を実行。
変動費は設計段階からの原価作り込み(ヘッドライトやシート、主要サプライの最適化、部品種類の大幅削減など)を通じて、改善効果を積み増している。生産再編は主要拠点の方針決定が進み、資産効率改善も本社のセール&リースバック等で具体化した。「品質第一」の大原則を崩さずにコスト改善、という前提も強調されている。ここは大事。
“攻め”の芯は商品戦略。2027年度までに連続投入する新型車のうち、すでに9車種が明らかにされ、2025年度にはリーフ、ルークス、キックス、欧州キャシュカイe-POWER、中国N7などが並ぶ。国内は軽(ルークス)とミニバン、e-POWERで「所有満足」を底上げし、北米は次期ローグ/キックスやパスファインダーで収益回復の主力を築く。中国はN7を皮切りに、スマートコックピットやADASの技術的進化で日産の商品力を再定義する。
国内を牽引するルークスは発表後6週間で1万5,000台の受注とされ、需要の手応えは強い。加えて、設計段階からの部品点数削減(例:次期ローグで部品種類6割超を削減計画)は、品質を落とさず量産効率を高める“真のモノづくり力”につながる。
記者会見では質疑応答も熱かった。記者からの、
「JMS2025(ジャパンモビリティショー)の手応えは? 新型エルグランド、パトロールを出展し、社長自らプレゼンしていたが、来場者やSNS反応はどうだったか?」
との質問に、エスピノーサCEOの回答は以下のとおり。
「反応は上々でした。これは実際に調査した結果ですが、JMSにおける日産の話題について、SNS上の会話量は平時比で約15倍、うちポジティブな意見は約35%と、従来比で顕著に改善しました。来場者への案内を通して日産の実力を示せたことが大きいです。これは日産再建策が、コスト削減と再編の“第1段階”から、商品・戦略・技術にフォーカスする“第2段階”へ軸足を移す転換点になったと考えています」
続けての質問。
「ホンダとの協業は進んでいるか。資本提携の可能性はゼロに戻ったが、技術連携は継続検討していると報道されたが、その後の進捗は?」
以下、回答。
「ホンダさんとの技術提携は、複数領域で検討を継続しています。現時点で開示できる具体的な内容はありませんが、電動化、ADAS、ソフト領域など“使える技術を速く取り込む”という思想は共通しています。選択と集中の実利を重視した連携を探っています」
そのほかの質疑も重要だった。
国内は上期こそ弱含みだったが、報道環境の逆風が和らぐにつれて集客が改善。ルークスの予約実績がその象徴といえる。欧州はキャシュカイ第3世代の切り替えで下期にかけて寄与が出る見立て、中国はN7の立ち上がりが奏功しており、輸出についても「戦略上、進める方針」を表明した。輸出拠点はすでに設立済みで、複数モデル・複数地域での展開を視野に入れている。

































コメント
コメントの使い方電動化といっても日産はシリ-ズ。ホンダはパラレルと、全く構造が違う