ベストカーの国沢光宏氏の連載『クルマの達人になる』。連載回数479回を数える人気の連載だ。今回は高齢者の交通事故を防ぐ対策に迫ります。
文:国沢光宏
写真:shutterstock
初出:ベストカー2015年12月26日号『クルマの達人になる』
免許証返納は意味がない!? 高齢者事故の対策の現状とは?
最近高齢者の事故がニュースで頻繁に取り上げられる。高齢者の事故はずっと同じペースで発生しているのだけれど、大手メディアの傾向として「話題になるなら針小棒大も上等!」。ただこういった機を捉え、安全策の拡充を図ることは重要だと思う。
専門誌らしく一般メディアとまったく違う観点から、高齢者事故の対応策を考えてみたい。10年ほど前から熟慮してきたのだけれど、ここにきて技術力が大幅に向上。
すべて実現できそうになってきた。まず高齢者の認知症対策として行われている「免許証取り上げ策」ながら、ほとんど実効性なし。そもそも認知症がわかっていない、というかわかっていないフリをしているんだと思う。
認知症の方から免許を取り上げたって、免許証がないことすら認知できなくなってしまう。認知症というのはそういう症状なのである。
判断能力を持つ他の家族と同居していればキーを取り上げたり、車両を売却するなどの手段も取れるけれど、独居老人だとそうもいかない。免許証の認知症対応策は天下り団体を作ったり、稼働率が落ちた教習所に講習やらせりしてお金を落とすシステム作り。
認知症で危険なのは、平常な状態と認知症が混ざる数年間ながら、今のシステムではザルで水を汲もうとしているようなもの。
認知症対策は、エンジン始動時に日付などでいいから(日付がわからなくなるのは認知症の代表的な症状)、4桁程度の暗証番号を入れさせるなど、物理的に乗れないようにするしかないと考える。なぜ国交省はやらない?
現代の技術なら防げる事故も多い
高齢者の 事故はアクセルの踏み間違いが多い。どうやら年間7000件くらい踏み間違い事故は発生しているようだ。大きな事故になってしまうケースは少ないだろうけ れど、看過できない件数である。
このウチ、後進時の飛び出しは〝ほぼ〟カンペキに対応可能。最も効果的だと思うのが、スバルの後進速度リミッター。アクセ ル全開にしてもユックリしか走らない。バックで飛ばそうって人はいないだろうし、飛ばす必要もない。全車標準でいい。
問題は前進。目の前に壁や人などいれば、アイサイトのような高い性能持つカメラ式の自動ブレーキで飛び出さないシステムを構築可能。すでにアイサイトは飛び出さない。
ただ前方に 障害物のない状態で踏み間違えたら、いかんともしがたい。このあたりは人工知能で判断できるようなシステムを作らなければならないだろう。技術は進化した。数年以内に踏み間違えで発生する事故防止装置の採用を販売しているすべてのクルマに義務づけるべきである。
もうひとつはドライブレコーダーの設置。これは高齢者側も、普通のドライバーも必要である。不思議なことに高齢者になると健常な方でも「ブツけた時の問題意識」が薄くなる傾向。
自分のクルマがブツかったのに、無視して走ってしまう。捕まえてみると高齢者だったというケースが多いそうな。被害者になったほうはタマらないし、ブツけた高齢者 は悪質な当て逃げになる。ドライブレコーダーが唯一の証拠になります。
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