原付免許が廃止になる!??? 絶滅危惧種「原チャリ」の行く末【クルマの達人になる】

原付免許が廃止になる!??? 絶滅危惧種「原チャリ」の行く末【クルマの達人になる】

 ベストカーの国沢光宏氏の連載『クルマの達人になる』。連載回数480回を数える人気の連載だ。

 今回は日本に残る50ccの原付免許について迫ります。世界の流れは125ccが標準。日本でも普通免許で125ccが乗れるようになる!?

文:国沢光宏/写真:ホンダ、shutterstock
ベストカー2017年6月26日号『クルマの達人になる』より再録


原付免許は時代錯誤!? それでも形骸化しそうな理由とは?

 「普通免許で125ccバイクまで運転できるようになる」という話は以前から出たり引っ込んだりしている。

 世界基準を重視する経産省としちゃまったく問題ないことなのだけれど、警察が首を縦に振らないという状況。

 参考までに書いておくと、世界基準で見ると50㏄バイクは自転車の延長線にあり、免許など不要。

 免許の国際協定となっているジュネーヴ条約でも『原付』という項目などなく、したがって原付免許だけだと国際免許証は交付されない。時代錯誤の免許なのだった。

 逆に免許が必要なバイクの排気量は、世界的に見ると110ccくらいから上。だからこそ110cc以下のバイクって日本にしかない(モペッドはペダル付き)。

 100歩譲って日本が鎖国しており、しかも原付の販売状況最高の状況なら、そのまんまでもよいと思う。

 最初にやってきた「黒船」はTPPだった。経産省関係者から「TPPで日本の原付制度が問題になっている」と聞いたのだ。私がWEBメディアで書いて大騒ぎになりました。

 確かに世界基準で110ccまで原付免許のワクを広げるなら、ベトナムなどで生産しているバイクを日本で販売しやすくなる。なんたって安価です。

 110ccだと6万円くらいからホンダやヤマハなど日本ブランドが買える。日本に持ってきたって10万円以下だろう。

 ベトナムからすればビジネスチャンス。TPPは関税の問題だけにかぎらず法規や制度まで含む。そんなことから経産省は真剣に原付の排気量ワク拡大を検討してたらしい。

 しかしTPPはアメリカの反対で発効時期がわからなくなった。同時に原付も話題にあがらなくなってしまう。

 しかし! 鈴木修会長が「このままだと50ccは作れなくなる」とコメントしたのである。確かに50ccバイクの市場規模は縮小の一途を辿っており、すでにホンダとヤマハは業務提携。

 原付バイクを一緒に作るという驚きの決定をした。もはや50ccバイクで利益をあげることは難しいのだ。

 鈴木修会長の発言でスズキは原付から撤退するという動きが容易に予想できる。スズキが撤退すれば、原付メーカーはホンダとヤマハが提携して作ったモデルだけになり、価格競争力もヘチマもナスもない。

 50ccバイクが20万円以上するような状況は定着すると思う。かといって外国のリーズナブルなバイクに50ccという排気量などなし。

 このままだと原付バイクに乗ろうという人はいなくなる。「それでいいのか?」っていうことですが今のところ「それでいい」という流れ。

 郵便配達は遠からず電動バイクになりそう。新聞配達も18歳未満の人だと電動バイクになるだろう。となればあまり困る人はいない。

 もはや原付バイクが若い年齢の人の通勤などに代表される貴重な移動手段という時代じゃなくなったことを意味する。もちろん外国からの圧力でもあれば原付免許の排気量拡大も考えるだろう。

 されどTPPがなくなった今、外圧もなし。警察が積極的に動くとも思えない。かくして原付は形骸化していくと予想します。

国内各社は125ccのスクーターをラインアップする。2人乗り、二段階右折の義務がない、最高速度が60km/hなどメリットも大きい。写真はホンダのリード125
国内各社は125ccのスクーターをラインアップする。2人乗り、二段階右折の義務がない、最高速度が60km/hなどメリットも大きい。写真はホンダのリード125

国沢光宏の「クルマの達人」の記事はこちらから読めます。

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