2025年6月11日、立憲民主・維新・国民民主など野党7党が「7月からガソリン暫定税率を廃止する法案」を衆院に共同提出した。残り10日となった国会期間中に成立→ガソリン代値下げを目指す強気なスケジュールではあるが、「そもそも今まで何やってたんだ」感のある法案でもある。以下、この法案提出と自民党森山幹事長の「ちょっとそれはないんじゃないの…」という反応を踏まえて、今後の自動車税制の動きを整理します。
文:ベストカーWeb編集部、画像:AdobeStock
【画像ギャラリー】自動車関連諸税と関連画像(3枚)画像ギャラリー「あまりにも唐突」……いや唐突ではないですよね
野党7党からの「ガソリン暫定税率廃止法案」提出を受けて、与党自民党の森山裕幹事長は会見で、「7月1日まで2週間余りで廃止するのはとてもできる話ではない。あまりにも唐突ではないか。買い控えや在庫切れで流通が混乱する恐れがある」と、実質的に門前払いの意向を表明。
この発言に、SNS等では「唐突もなにも、昨年(2024年)12月11日、自公・公明・国民の幹事長会談で“暫定税率廃止”に合意しているはずでは?」という嘆きが多数あがっている。それはそのとおりだろう。幹事長レベルで方針決定を“ピン止め”しておきながら、半年後に「唐突」と切り捨てるのは、あまりに無責任だ。
その一方で、昨年末からの”暫定税率撤廃の検討”は(野党法案とは別に)政府与党が2025年度税制改正大綱で打ち出した「自動車関連税制の抜本的見直し」とセットで進められていることが分かっている。
政府は「2025年末にパッケージをまとめ、2026年度から実施する」方針を税制大綱で公表しており、車体課税は消費税への一本化、保有課税は「重量+環境性能」ベースへ移行し、燃料税も包括的に再設計する考えだ。要するに、暫定税率だけを先行廃止すると、全体のバランスを崩しかねない、だから野党案は門前払いするしかない、というわけだ。
ガソリンと軽油の価格変動は日々の生活を直撃する。いま困っている人がたくさんいるなら手当てするのが政治の役割のはずであるが、そういう機会を政府与党は逃したことになる。
地方の声――確かに痛みは大きいが、補助金を注ぎ込み、トリガー条項も無視
もし仮に、ガソリン暫定税理を完全廃止したとすると、地方税収が年間7,600億円減少すると言われている。ただでさえ人口減少に苦しみ、疲弊している重い地方行政サービスの財源をどう確保するかは、日本社会全体の難問といえる。
実際、道路整備や防災インフラに回す資金が不足すれば、全国の道路事情に深刻な影響が及ぶ懸念は否めない。
だが一方で、政府は物価高対策として、生活支援を目的に令和3年度(2021年度)から「燃料油価格激変緩和対策事業」を始めている。電気・ガス・ガソリンの高騰対策に補正予算や予備費を活用して巨額の補助金を投入してきた。
ざっくり説明すると、ガソリン補助金が令和4年度末までで累計約7兆1,395億円、追加予算を加えると約7兆7,344億円。電気・ガス支援は同じく令和4年度末までに3兆9,614億円、追加で4兆5,557億円。 エネルギー全体で11兆1,009億円、最新試算では12兆2,901億円に達している。
補助金だけで2年間で12兆円超……。これを地方交付金に振り替え、7,600億円の穴を埋めてもまだ余る。むしろ恒久的な暫定税率廃止とセットで予算を組み直すほうが、短期的パフォーマンスに終始する補助金よりも明快で効果的ではないか。
さらに租税特別措置法には、「平均小売価格が3か月連続でレギュラー160円/Lを超えた場合、暫定税率を停止する」というトリガー条項がある。燃料価格が高騰するたびに国会内でも浮上する議論だ。
しかしこのトリガー条項は、東日本大震災の復興財源確保を理由に凍結され、いまだ一度も発動されていない。法律に基づく自動停止システムを放置するのは、法治国家として本末転倒だ。
資源エネルギー庁の「給油所小売価格調査」によると、2025年4月14日には全国平均186.5円/Lの高値を記録したものの、定額10円値下げ開始後は下落基調に転じ、6月11日時点で174.3円/Lまで低下している(2024年1月以来の水準)。とはいえ10円の定額支援は“おまけ”にすぎず、元の暫定税率25.1円はそのままだ。





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