運用益は保険料を運用して得た「利息」
Q2/今、話題になっている運用益とは?
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「運用益」とは、これまで自賠責保険で累積されてきた資金を元本とするお金です。具体的には、人身による交通事故の発生タイミングは、加入者から集めた保険料の収入時期と異なります。
よって、被害者に支払われる保険金の支払い時期とは時差が生じます。そのため保険会社には一定の資金が残るわけですが、この手元にある一時的な資金を運用して得られた利息分を「運用益」と言います。
この運用益は、利潤(黒字)や損失(赤字)が生じないように算出する「ノーロス・ノープロフィットの原則」に則って充当されていて、交通事故等によって脊髄損傷を負った方が社会へ復帰するための「ピアサポート活動」や、重篤な患者を搬送するためのドクターヘリに関する知識を得る「ドクターヘリ講習会」の開催支援、さらには高次脳機能障害を負った方やその家族の社会復帰を目的とした「集団治療プログラム/オレンジクラブ」の支援などに使われています。
運用益の返済期限は間近!!
Q3/なぜ今、運用益問題が表面化?
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事の発端は1994年度と1995年度に、旧大蔵省(現財務省)に対して旧運輸省(現国土交通省)が、特別会計から貸し付けた運用益(1兆2000億円)の存在です。
2015年度までに6921億円が返済されたものの、残りは利子相当額を含めて6169億円がそのままになっていることから問題視されています。返済が滞っている理由として財務省は「景気の低迷」を挙げています。
今、それが表面化したのは財務省と国土交通省の間で交わした返済期限(過去に3度設けられていたがいずれも延期され今回が4度目の期限)が2018年度に設定されているからです。
全額返還で保険料値下げは可能?
Q4/未返済の運用益6169億円はかなりの大金。全額返還されたら、自賠責保険料を値下げすべきでは?
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6169億円は大金ですから、全額返済されることで自賠責保険の保険料が下げられるという見方もあるでしょう。
しかし、現時点で自賠責保険の運用益は前述の、社会貢献活動以外にもたくさん使われています。
また、こうした活動は日本損害保険協会による「自賠責保険運用益活用事業」として行われていて、交通事故の発生件数そのものも高止まりになっていることや超高齢社会がさらに進むことから、今後もその存在意義は大きくなっていくと言われています。
今後、保険料の値上げはあり得る?
Q5/保険料の値下げが難しいとしても、運用益問題が一段落したら、しれっと値上げすることは言語道断。あまり国は信用できないので、「しれっと値上げ」もあり得るのでは?
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そうですね。そういった見方も十分に考えられます。しかし、運用益の問題が“一段落”というのは正しい場所に資金が戻るということです。
よって、その時点での運用益による支援先が確固たるものであり、国民に対し広く救済することを目的としたものであれば、支援の手を緩める必要はないのではないでしょうか?
もっとも保険料の値上げは、主たる人身事故の発生件数を下げていくことと同時に、日本において約8100万台に及ぶ車両をどれだけ事故から遠ざける運転環境を国として提供できるかに掛かっています。
よって、乗り物に乗る一人ひとりが些細なことでも良いので、国に対して望まれる交通インフラの形を提案(カーブミラーの設置や道路標示の見直しなど身近な要求)するなど、値上げを極力避けるための交通環境(=事故のない社会)を整えていく相互扶助の精神が大切であると考えています。
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