五輪まで2年…死亡事故増えるタクシーのマナー 改善できるか?

 2020年の東京五輪開催まで間もなくあと2年を切る。五輪開催で注目を集める“車”といえば、外国人観光客も利用するであろうタクシー。だからこそ考えたいのが、タクシーのマナーだ。

 国土交通省がまとめた最新の「事業用自動車の交通事故統計の概要」によれば、平成19年から平成28年の10年間で全体の交通事故死者数は減少した一方、タクシーによる交通事故死者数は増えている。目下、平成24年から28年まで5年連続で増加中だ。

 また、乗合バス・貸切バス・タクシー・トラックの各種でみた走行距離1億kmあたりの交通事故死者数でも、昨今安全性が話題となった貸切バスに次いでタクシーの数値は2番目に高い。今、ニッポンのタクシーのマナーが問われている。

文:渡辺陽一郎/Photo:Shutterstock.com


タクシーと乗客、2つの視点で考えたいマナー

事業用
事業用自動車の交通事故統計の概要(平成28年)/出典:国土交通省。トラック等の事故死者数が減少するなかタクシーは増加に転じている

 皆さんとタクシーの間には、2つの接点があると思う。

 ひとつ目はクルマのドライバーとして、公道をタクシーと一緒に走る時。ふたつ目は、乗客としてタクシーを利用する時になる。この2つの接点が混ざり合って、タクシーのイメージを構成している。

 タクシーについては、しばしば「マナーが悪い」という批判が聞かれる。一時停止の標識を守らずに徐行しながら通過するタクシーを時々見かけるが、これは運転マナーの問題というより、「指定場所一時不停止」という交通違反だ。

 また2車線の中央を跨ぎながら走るタクシーも見かける。路上駐車の車両を避けて走りながら、手を上げている人がいたらすぐに停車できるが、円滑な交通の流れを妨げてしまう。後続車両のドライバーも苛立たせるから、危険も高まる。

 このような交通違反をしてならないのは、一般車両も、タクシーのような旅客運送事業用の車両も同じだ。

 その上でいえば、タクシーの場合は、旅客を安全に乗車させて運ぶ義務にも反する。クルマの運転は、職業ドライバーでなくても運転免許の必要な「業務」に分類されるが、社会通念でいえば、旅客運送事業のドライバーには一層の法令遵守が求められる。

 タクシーには、プロとしてのスムーズで好感の持てる運転を見せていただきたい。

タクシーとの車間距離は空けるのがベター

 法令遵守のためには、法定速度を守るのは当然で、道路状況によってはタクシーが周囲のクルマの流れに付いていけない場合もある。これは仕方ない。

 特に空車のタクシーは、乗客を乗せる必要があり、速度を少し下げて走ることが多い。不意に停車することもあるため、クルマを運転している時は、タクシーの後ろ側を車間距離を詰めて走るのは避けたい。

 タクシーが前方を走っている時は、いつ左側に停車するか分からないから、その心構えをしておく。そうすれば車間距離は自然に開き、タクシーの後ろで急ブレーキを掛けるような危険も避けられる。

 そして、タクシーにはプロとしての運転が求められるが、一般道路上で乗客を乗車させたり降車させる負担も負う。周囲の車両が、ある程度はフォローすることが大切だ。それが欠けると交通事故の危険が高まる。目的は事故防止だから、一般ドライバーも少々のことは我慢したい。

交差点は乗降禁止なのに…問われる乗る側のマナー

Photo/shutterstock.com
 タクシーは交差点付近で乗り降りをおこなうケースも多いが、運転者だけではなく、乗客にも責任はある(Chanclos / Shutterstock.com)

 次は乗客の視点で考える。ここで可能な事故防止やマナーを守る方法も多い。

 まずはタクシーに乗車する時のことを考えたい。横断歩道の付近は車道に出やすいから、そこでタクシーを停車させようとすることも多いが、交差点の5m以内は駐停車禁止場所だ。タクシーの乗り降りも行えない。

 タクシーに手を上げる時も配慮が必要だ。すぐ近くまで接近した時に手を上げると、減速度が強くなり、タクシーが追突される危険を誘発する。タクシーが少し離れたところで手を上げて、スムーズに停車できるように配慮したい。

 乗車して目的地を告げると、ほとんどのタクシーは即座に発進する。安全性を考えると、乗客がシートベルトを着用した後で運賃を表示するメーターのスイッチを入れて発進して欲しいが、そのようなタクシーは皆無だ。

 この点をタクシードライバーに尋ねると「シートベルトの着用を待っていたら、乗客に怒鳴られる。いつも慌てて発進している」という。「急いでいるからタクシーを使う」わけで、即座の発進も理解できるが、安全面からは好ましくない。だから筆者は、いつも慌ててシートベルトを着用している。

「曲がるのはそこじゃない!」に潜む危険

 この「慌て」も危険性を高める。稀に2車線道路の右側で空車のタクシーが信号待ちをしている時など、そこまで乗客が出向いて乗車していることがある。そもそも空車表示のタクシーが右車線にいること自体、危険を誘発するが、道路の中央まで出向く乗客にも問題がある。

 乗車した後で、乗客がドライバーに「急いで行ってくれ」と告げるのも危険だ。高速道路を使える場合を除くと、「急いで」と言われても目的地の到着時刻は早められない。ドライバーの気分を不快にして、危険性を高めるだけだ。

 そして、乗車したら目的地をドライバーに分かりやすく、的確に伝えることが大切になる。

 伝え方が曖昧だったり、曲がる交差点を唐突に指示すれば、急に減速したり慌てて曲がることになってしまう。乗客が運転席に身を乗り出しながら説明して、一度減速したタクシーが再び加速する場面を時々見かける。

 「曲がるのはそこの角じゃない、あっちだ!」などと言っている様子だが、乗客もドライバーも、互いにそうならないよう注意したい。

 都市部では同じ目的地へ行くのにも複数のルートがあり「アンダーパスをくぐるか、側道を行くか」で判断に迷うこともある。

 これも乗車した段階で「この先のアンダーパスか、側道かは、渋滞の状況に応じて判断しましょう」と告げて、なるべく早い時点でルートを決める。それをしないなら、すべてドライバーに任せて文句は言わない。

東京五輪開催が迫るなか、新しいタクシー用車両も発売されたばかり。事業者、利用者、そして一般ドライバーも含めて、より安全なルールとマナーを見せられるか
東京五輪開催が迫るなか、新しいタクシー用車両も発売されたばかり。事業者、利用者、そして一般ドライバーも含めて、ルールとマナーを徹底し、より安全な日本の自動車環境を実現したい。(BT Image/Shutterstock.com)

◆  ◆  ◆

 タクシーでも、自分のクルマでも、最も優先すべきは安全だ。タクシーを利用する時も「どうすれば安全に乗車できるか」を重視する。そうすれば無理なことはしなくなり、乗客とドライバーのストレスも抑えられ、気持ち良く利用できるだろう。クルマを運転していて、タクシーに近づいた時の気持ちと対応も同様だ。

 同じクルマなのだから、運転も、タクシーの利用も、本質に変わりはない。上下の違いもなく、立場は並列だ。

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