■利便性を高める機能と装備を充実させて実用性もハイレベル
ミニバンにとって必須となる実用性についても申し分のない能力を有している。後部ドアはスライド式ではないが、後席のヒンジ式ドアは90度近くまで開き、2列目シートのウォークイン機構によって、2列目はもちろん3列目シートへのアクセスがしやすくなっている。
さらに、2列目シートには可動域が約300mmのロングスライド機構が備わっており、左右に跳ね上げられるマルチアップ式の3列目シートと相まって多彩なシートアレンジが可能で、乗車人数や荷物の量と大きさに合わせて柔軟に対応できる。運転席まわりにも使い勝手のいい収納が設けられているので、身のまわりの小物を車内で整理するときにも困ることはない。
標準仕様のほか、日産車をベースにしたカスタムモデルのプロデュースや製作を行っているオーテックジャパンが手掛けた特別仕様車「アクシス」も選べた。アクシスは、バサラの内外装に専用装備をプラスして、「よりおしゃれでより上品なダンディミニバン」というコンセプトを具現化したカスタムモデルだ。
外観のカスタムがメインで、フロントまわりは洗練されたオリジナルデザインとし、16インチアルミホイールとローハイトサスペンションを装備。こうしたカスタムによって、ベース車とはひと味違う個性的でスポーティなスタイルとしていた。
ファミリーを中心に支持され、新車市場においてカテゴリーそのものが拡大傾向にあったミニバンクラスのなかで、バサラは“高級”であることを打ち出し、内外装の作り、走行性能についても狙いをしっかりと具現化していた。そのうえで優れた使い勝手を実現しており、ミニバンとしての完成度の高さは申し分なかった。
しかし、ライバルのオデッセイが強すぎたこと、プレサージュほどの知名度を得られなかったこと、さらに当時の日産が推し進めていた経営合理化策の影響を受けたことなど、さまざまな要因が重なり販売成績は振るわず、2003年6月にはプレサージュに統合され生産中止となった。
ライバルよりも室内空間に余裕があり、エンジンラインアップが多彩で走りも満足できるレベルにあったバサラ。独特の気品を感じさせる作りによって、高級ミニバンのあるべき姿をユーザーに強くアピールしていただけに、1代で消えてしまうには惜しいクルマだったと言っていい。
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