■通なスポーツカーを求めるニーズに最適な選択
ローダウンサスで車高が15mm下げられ、足もとは専用デザインの16インチアルミホイールで飾り、大型のロアスカートを装着。専用エンブレムを含め、ユーロRとして与えられたエクステリアアイテムはわずかにこれだけ。
やたらと大きなリアウイングとか、リアビューに威圧感を与えるディフューザーといった類の空力アイテムは備わらず、そのルックスはいかにもスポーツモデル然とした佇まいではなく、少しだけ特別感を増すようなモディファイにとどめている。
それでもスポーツモデルらしい雰囲気は十分に醸しており、そのうえ専用ボディカラー(ミラノレッド)の設定やエンジンヘッドカバーを赤く塗装するといったユーロRならではの要素が、通なスポーツカーを求める大人のユーザーの琴線に触れた要因だった。
車内は基本的な造形をベース車から継承しながら、レカロ社製バケットシート、MOMO社製革巻ステアリングホイール、アルミ製シフトノブ、ホワイトメーターパネルを専用アイテムとして標準装備。走りの機能を高めるこれらのアイテムは、スポーツドライブを支えるとともに、乗り込むたびに特別なクルマに乗っている気分を味わわせてくれた。
ホンダのスポーツモデルといえば、シビックやNSXに設定されていた「タイプR」が筆頭に挙げられる。これらはホンダスポーツモデルの最上位グレードとして単純な速さを求めた、まさに走りに先鋭化した特殊なクルマである。
ユーロRは、走りを極めるという点においてはタイプRと同様だが、同じRでも「タイプ」ではなく「ユーロ」としたのは、走りだけに特化せずセダンとしての扱いやすさとスポーツ性の両立をコンセプトに掲げていたからであり、決してタイプRの下位互換などではない。
現行型シビックタイプRは、スポーツカーとしての速さ楽しさはもちろん、だれもが安心して快適に走り続けられるという二軸を実現し、これこそ「羊の皮を被った狼」だと言われているが、あのスポーツ性を主張しすぎたルックスを“羊”と形容するのは少々違和感を覚える。
やはり、ユーロRのようにジェントルな佇まいを残しつつ、走り出せば「これはスポーツカーだ」と思わせるような、奥ゆかしさを持っていてこそ真の羊を被った狼なのではないだろうか。そんなクルマが凋落著しいセダンクラスに登場し、ジャンルを活性化させてくれることを切に願う。
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