発端は佐藤琢磨の神スタート!! 『0.1秒以内は失格』 F1 フライング判定の秘密と歴史

発端は佐藤琢磨の神スタート!! 『0.1秒以内は失格』 F1 フライング判定の秘密と歴史

 「彼のスタートはフライングではないか」。

 7月9日決勝、F1オーストリアGPのスタートで、その“疑惑”は発生した。実はF1では、スタート用シグナルが消灯した後の“神スタート”もフライングの対象となり得る。

 そのきっかけとなったのは、インディ500で日本人初優勝した佐藤琢磨だったのだ!!

文:津川哲夫/写真:RedBull Content pool、INDY CAR


センサーで精密計測!! フライングの見逃しは『あり得ない』

 先日のオーストリアGPのスタートで、バルテリ・ボッタス(メルセデス)が超スーパースタートを決め、見事にレースをリード。今季2勝目をあげた。

 しかし、彼のあまりの好スタートがジャンプスタート、つまりフライングではないかと疑われたのだ。

 確かにリプレイ映像を見ると、スタート時にボッタスだけが動き始めていて、他車は停止状態なのが確認できる。これが他の者にはフライングと感じられたのだろう。

(動画:www.formula1.com)※ 動画開始直後がスタートシーン

 しかし映像で確認するかぎり、確かにレッドライト消灯と同時に飛び出しているようで、明らかなフライングと認めることが出来ない。

 そしてFIAはこのスタートにフライングを課さなかった。つまり、ボッタスのスーパースタートを認めたわけだ。

 F1ではすでに大分前からスタート時の動きを感知するトランスポンダーの搭載が義務着けられ、スターティンググリッドの路面に埋め込まれたセンサーがグリッド上のマシンの動きを感知し、信号をFIA(国際自動車連盟)の計測機器に送っている。

 計測は1000分の1秒まで行われていて、スタートからゴールまで正確に計測されている。この計測はスターティングシグナルと連動していて、フライングなどの動きを見逃す事はまずないといってよいだろう。

五輪と同じ!! F1でも『反射神経を越えた反応』は失格に

 ここで面白いのは実はシグナルの消灯以後でもフライングは取られることだ。

 実際、陸上競技などでもフライングは“スタート合図後の動き”でも科せられる。

 不思議に思うかもしれないが、これは人間の反射神経に係わる規則なのだ。そもそも人間の反射神経は通常人なら訓練しても0.2秒ぐらいと言われている。

 したがってオリンピック等ではスタート合図後0.1秒までの反応は、『人間では対応できない』という判断で、0.1秒以内はフライング裁定となるわけだ。

 この方式はF1にも導入されていている。今回のボッタスのスタートは、素早い反応だが、動き出しは0.1秒を切る事はなかったというわけなのだろう。

 ップドライバー達の反応速度は0.2秒程と言われていて、ボッタスがほぼ0.1秒近くでスタートしていたのなら、ほぼ0.2秒超えのセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)との間に、スタートの瞬間だけで0.1秒の差がついていることになるのだ。

オーストリアGPのスタート直後。僅か0.1秒のスタート差でも、先頭のボッタスは2番手のベッテル(フェラーリ)に隙を与えないだけの差を作り出した
オーストリアGPのスタート直後。僅か0.1秒のスタート差でも、先頭のボッタスは2番手のベッテル(フェラーリ)に隙を与えないだけの差を作り出した

 0.1秒はレースの平均速度から考えると6メートル程の差をつくりだす。そしてポールポジションのボッタスがこのアドバンテージを持ったのだから、2番手以後のマシンが追いつくのは理論的にはあり得ないはずなのだ。

 しかし、こういった判定は一体いつ頃からでてきたのだろうか。

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