『フライングを厳密に』契機はモナコGPの琢磨
現在のようなフライング判定が行われるようになったのは、トランスポンダーがF1に搭載されるようになってからで、それ以前は競技委員達による『目視』で判定が行われていた。
しかし、人間のまばたきは速くても0.1秒程。もしもこの“0.1秒フライング”を制定しなければ、動きの瞬間を瞬きで見逃すこともあり得る。
このフライングトーランスが語られるようになったのは2004年のモナコGP。すでにローンチコントロール(タイヤの空転を検知し、素早い発進をアシストする機構)が禁止されていたが、ルノーとBARホンダは常に最良のスタートをしていた時だ。
ここで佐藤琢磨のBARホンダは凄まじいスーパースタートを決め、スタートで3台抜きをやってみせた。このスタート、トランスポンダーの計測では琢磨のシグナル反応は実に0.03秒であったという。これが人間の反応速度を大幅に超えていて、このときから反射神経と反応速度の関係が注視されるようになった。
しかし、FIAは琢磨にジャンプスタート裁定を下さなかった。なぜならわずか2周で琢磨のホンダエンジンはブローアップ。
タバココーナーを白煙で包み、二次アクシデントを招いてセーフティーカーの出動に至り琢磨はリタイア。ペナルティの意味がなくなってしまったからだ。
『反応不可能な0.1秒以下』が合法ならギャンブルスタートが可能に
この反応速度に対するフライング判定は、ただ単に反応速度うんぬんだけの問題ではなく、現実には0.1秒の規定がなければ最高のスタートは0秒、すなわち人間の反応不可能の領域に入ってしまい、好スタートを狙うにはシグナルの消灯を予測して、視覚での確認以前にクラッチを繋ぐ、言わば“ギャンブルスタート”になってしまう。
反射神経、反応速度を競うのではなく、予測と感、一か八かのギャンブル勝負。これではF1レーシングのスポーツ性は希薄化してしまう。
フライングスタートは現在ではほとんどなくなっている。0.1秒のアドバンテージは大きいが、ペナルティを取られてはすべてが台無しになってしまう。
0.1秒の為に多くの順位を落とすことは決して得策ではないのだ。F1のクオリティにも、そしてチームとドライバーのステータスと経済的にも。
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