F1はアジアでの2連戦を終え序盤3戦を終えた。ここまでのトロロッソ・ホンダは第2戦で見事4位入賞したいっぽう開幕戦は15位、第3戦は18位と浮き沈みが激しい。ここから欧州へと舞台を移すシーズンを占うホンダF1の開幕3戦、その戦いから順位だけではわからない課題と期待が見えてきた。
文:津川哲夫
Photo:Honda、Getty images/Red Bull Content Pool
“弱点”を強く認識し「再出発」したホンダF1
ホンダが新しく選んだ道は、将来的なレッドブルとの関係を視野に入れてのトロロッソとのパートナーシップ。
2018年シーズンは、ホンダ第4期F1プロジェクトの再出発。2017年までの3年間は、長期間F1の現場から離れていたホンダがF1の現実を知るための研修期間と考えて良いかもしれない。
この3年間、F1からシビアな現実を突きつけられ、ホンダF1エンジニアリングの立ち位置が明確となった。
F1での技術レベル、F1参戦への絶対的なビジョン、政治的戦略、競争へのシビアさ……過去3年間パートナーとのミスマッチも含め、これらの要素の全てで現在のF1レベルへ到達できなかった。
しかし2018年、これらの弱点は強く認識され、ホンダは新たなスタートを切った。トロロッソとのコラボレーションは、双方の身の丈が揃い、まさにパートナーシップが形成されてきた。
向上を証明したホンダの判断力
トロロッソ・ホンダ「STR13」は、昨年型「STR12」にホンダ製パワーユニット(PU)を換装し、今シーズンの規則に合致させたマシンで、ホンダPUもとりあえず信頼性を追求した昨年の発展型、悪く言えばマシンもPUも昨年型。
こう言うと「旧型」感が生まれ、ネガティブなイメージを持ってしまいそうだが、これは決して間違った方法論ではなかった。
1年間のデータ付きのマシンとPU、それぞれが可能な妥協を行い、昨年の弱点を向上させる努力をしたのだから。もちろん、この状況でトップエンドの競争力は望むべくもないが、信頼性が確認できた暁には、パフォーマンス面の開発へと進めるはず。
……といった状況でスタートした2018年。開幕戦は冬季テストの好調さを維持できず、1台はホンダPUの熱エネルギー回生ユニット(MGU-H)のトラブルでリタイア。しかし、もう一台は開幕戦完走を果たしている。
大事なのは順位ではなく、完走が最重要な目標であり、1台完走で目標の50%は果たした。
また、向上の証明はホンダの判断力にもあった。かなり改善してきた熱エネルギー回生ユニットにトラブルが起こったことは大きな失意を呼んだが、その後の判断はすばやく、2戦目にはすでに2基目のPUと補機類を投入、これが功を奏し見事な4位入賞と2台完走を呼んだ。
僅か2戦で出走4台中3台が完走。完走率は開幕戦の50%から第2戦目で75%へと向上している。いっぽう、第3戦の上海、予選・決勝と、バーレーンの成績からの期待は外れ、開幕戦並のパフォーマンスに戻っていた。
信頼性向上と改良型PU投入で高まる「期待」
しかし、これはネガティブではない後戻り。というのもレース中のチームメイト同士のアクシデントがあったものの、それぞれが何とか完走を果たしているからだ。
もちろん、順位は18位と最下位(20位)ではあったが、これで完走率は6台分の5ヘと向上した。信頼性へのアプローチは間違いなく向上への道を進んでいる。
また、第3戦・上海での低迷を別に悲しむ必要はない。何故なら現状では“1年落ちのマシン”なのだから。
「STR13」が基本的に昨年型ならば、今シーズンの7種類あるタイヤコンパウンドに特化したセッティングを施すのは至難の技。事実、昨季チャンピオンのメルセデスさえ苦しんでいる(今季3戦目まで未勝利)エリアなのだ。
第2戦バーレーンでは見事にタイヤのワーキングレンジに当たったことが快走の元だが、温度の大きく違う上海でバーレーンの再現は土台無理な話。
しかし、これも完走率が向上し信頼性の保証がついてくれば、その後はパフォーマンス面の開発に進めるはず。第5戦スペインGPには車体開発部品の投入が、第7戦カナダではホンダの改良型PUの投入もあるはずだ。
そう、信頼性が確立できれば、パフォーマンス開発はスケジュール通りに運べるわけだから、開幕4戦はいわば確認作業。特に熱エネルギー回生ユニットとターボユニットの信頼性を確立するのが今シーズン第一ステップ。
第1戦の熱エネルギー回生ユニットのトラブルはむしろ幸運と言えるかもしれない。早期のトラブルで思わぬウィークポイントを見いだしたのだから、シーズンの多くを無駄にしないで済んだと考えればよいのだ。
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