風雲急を告げた2021年の前半戦。ホンダの新型パワーユニット(PU)が予想以上のパワーアップに成功し、これまでレッドブルに不利とされていた高速サーキットでメルセデスに勝利した。さらに得意の中高速コースでも着実に勝利を積み上げ、5連勝。勝負の流れはこのままレッドブルに傾くか、と思われたが、後半戦の高速サーキット、モンツァとソチでは一転メルセデスに遅れをとってしまう。モンツァではコンマ4秒も差を付けられてしまったのだ。前半戦の高速サーキットでは、メルセデスAMG W12に後塵を浴びせていたレッドブルRB16Bがなぜ失速してしまったのか。元F1メカニックの津川哲夫氏に解説してもらった。
文/津川哲夫、写真/Mercedes-Benz Grand Prix Ltd,Red Bull Content Pool
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■連勝王者メルセデスを超えてきたホンダPU
2021年のF1シーズンに向けて、レッドブルはホンダの新型PUを搭載して挑んだ。昨年のレッドブル終盤戦の勢いならば、今シーズンもこの勢いを保ち、王者メルセデスに肉迫するに違いない、というのがシーズン前の大方の予想だった。これはメルセデス側の読みも同じだった。
しかし、いざ開幕してみると状況は一変。メルセデスはかろうじて開幕前半戦を制したものの、ハミルトンの3勝はまさに薄氷の3勝、レッドブルホンダの勢いは止まらず、特にこれまではレッドブルに不利とされていた高速サーキットであるアゼルバイジャン、フランスでメルセデスを突き放す速さを見せ、さらに中高速コースのオーストリア2連戦でも連続勝利を勝ち取った。
この第9戦オーストリアGPまでに、ホンダPUは何と5連勝を含む6勝もしているのだ。
今まで絶対の速さを誇示してきた高速サーキットで後塵を浴びせられたメルセデスは、今シーズンのホンダPUのレギュレーション違反を疑るコメントまで持ち出してきたほど。しかし第10戦イギリスGPからまたもや様相が変わってきた。
ここからメルセデスが高速コースでレッドブルホンダをかわすパフォーマンスを見せ始めたのだ。データ解析では、彼らのPUに20〜30馬力の向上があったと考えられた。メルセデスはインタークーラーの大幅な見直しによるパフォーマンスの向上と説明している。
イギリスGPでのスタートラップ、そして超高速コーナーの「コプス」でハミルトンとフェルスタッペンが接触し、フェルスタッペンがクラッシュリタイアしてハミルトンが優勝。ここから勝負の流れはメルセデスに傾き始めた。
そしてベルギー、スパの高速サーキットでは再びレッドブルが底力を発揮。ドライそしてウェットでも速さを見せ、マシンの総合力の高さをアピールし、フェルスタッペンがポールを獲得した。大雨でたった3周だけのペースカーレースで結果は予選そのまま。レッドブルホンダが高速スパを制した。
次のオランダを完勝したレッドブルだが、本格高速サーキットであるイタリアのモンツァではまたまた様相が一転した。
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