ホンダが描く新戦略! 佐藤琢磨が語る日本人がF1で戦うために必要なこと

ホンダが描く新戦略! 佐藤琢磨が語る日本人がF1で戦うために必要なこと

 「世界のトップに通用する、世界で戦えるドライバーを育成しよう」

 これは11月7日、青山の本社で行われた会見でホンダの山本雅史モータースポーツ部長が語った言葉だ。

 今回の会見は、鈴鹿サーキットレーシングスクール(SRS)の新体制を発表するために行われたもの。檀上では、2017年に日本人として初めて世界3大レースに数えられるインディ500で優勝した佐藤琢磨が、同スクールの新しいプリンシパル、即ち“校長”となることが発表された。

 インディ500での優勝は日本人の歴史を塗り替える快挙だったが、同様に世界最高峰の舞台となるF1では長らく日本人ドライバーの不在が続く。

 日本人が世界で戦うためには何が必要なのか? その答えを佐藤琢磨に聞いた。

文:ベストカーWeb編集部
写真:編集部、Mobility land、INDY CAR


ホンダ直系ドライバー育成機関の新“校長”に佐藤琢磨

 ホンダ直系のドライバー育成機関であるSRSは、1993年にSRS-K(カート)、1995年にフォーミュラドライバー育成を目的としたSRS-F(フォーミュラ)が開校。

 会見では「今後、さらに世界で通用する若手ドライバーを輩出していくために、佐藤琢磨選手をプリンシパルに、そして中野信治選手をバイスプリンシパルにしました」と山本モータースポーツ部長が明かしたとおり、元F1ドライバーの中野信治が、“副校長”となることも発表された。

 中野信治は発足当初から同スクールに携わっており、佐藤琢磨はSRS-Fが輩出したF1ドライバーであり、インディ500覇者。ともに未だ現役ドライバーでもある。

 これまで校長は元F1ドライバーの中嶋悟氏が務めていたが、世界の舞台で表彰台の頂点に立てる日本人を育てるべく、新たな体制がスタートすることとなった。

琢磨を変えた、琢磨が変えたSRS-F

SRS在籍時の佐藤琢磨と同校長の元F1ドライバー、中嶋悟氏

 これまで日本人でF1など海外のトップカテゴリーに挑戦したトップドライバーと比べると、佐藤琢磨の経歴は異色だ。

 彼とSRSの出会いは20歳の時。それまで自転車競技で輝かしい実績をあげていた琢磨だったが、モータースポーツ経験は皆無に等しく、しかも他の応募者より年齢も高い。

 当時のことを琢磨本人は、こう述懐する。

 「(ほかのSRS入校希望者は)まだ皆16~17歳なのですが、すでに10年以上のレース経験がある子たちばかりが揃っていました」

 「当時のSRSは70名の応募があったなかで、たった7人しか一般公募で入れない。(審査は書類で行うと聞き)その時100%落ちると思ったんです」

 「僕の履歴書は一行で終わってしまう。他の若いドライバーは何十行にもわたる。しかも僕一人が二十歳でした。一番年上で経験がないドライバーなんて、まず100%落ちると思って『1分間でいいので面接してください』と嘆願しました」

 その結果、選考方法が変わり、希望者は面接を行うことが決定。最終的に、佐藤琢磨ただ一人だけが、モータースポーツ未経験者としてSRS-Fへの入校が叶った。

 その後、琢磨は首席でSRS-Fを卒業。2001年にイギリスF3選手権でシリーズチャンピオンを獲得し、翌年F1デビュー。SRS-F卒業から僅か5年でF1に辿り着いた。

 日本の主要レースで実績を積むのではなく、欧州で実績をあげ、F1ドライバーとなった日本人という意味でも彼の経歴は異色だった。

 この会見の後、気になったことを琢磨選手に聞いてみた。「SRSでの経験のなかで、何が一番、その後のレース人生に役立ったのか」と。彼の答えはこうだ。

 「当時の僕にとっては、やはり圧倒的な走行時間ですね。そして、現役のトップドライバーと走れるチャンスがある。(これは他では)まずあり得ないですよね」

 SRSでの走行時間は延べ100時間にのぼる。F3選手権を2シーズン戦ったのと同等の「走り込み」は、琢磨の少ない経験を補うにはうってつけだった。

 さらに、スーパーGTの前身、全日本GT選手権に参戦していた山西康司選手や脇阪寿一選手(後に同シリーズで通算3度年間チャンピオン獲得)など、自分の実力をはかる“物差し”となる現役のトップドライバー講師と走る機会もある。

 「(現役トップドライバーと)一緒に走れるわけですよ。これは生徒にとって非常に大きな自信につながる。でも、足りないモノもたくさんあるわけで、それに気づかせてくれるのが、まさにSRSの醍醐味ですね」

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