ノートe-POWERが売れる「本当の」理由は日産への不満?

ノートe-POWERが売れる「本当の」理由は日産への不満?

 日産ノートが売れている。初代は2004年にデビューし、2代目は2012年に登場。

 2016年11月のマイチェンでシリーズ方式のハイブリッドシステムである「e-POWER」を追加し、同年11月には1万5784台を販売して月間販売台数1位を獲得。

 日産車が月販台数でトップを獲ったのは30年2カ月ぶりでした(前回はB12型のサニーだそうです)。以来、販売ランキングで上位に居続け、2017年に入ってからも1月と3月にトップを獲っている。

 突然売れ始めた(ように見える)ノート、その牽引役となっているe-POWER、どこがそんなにいいの? 本当にいい車だから売れてるの? そして賢い買い方は?

 自動車評論家の渡辺陽一郎氏に詳しく紹介&考察してもらいました。

文:渡辺陽一郎 写真:平野学、HONDA


■ノートe-POWERは、他の日産車への不満の裏返しも

 ノートは日産の主力車種となるコンパクトカー。現行型は2代目で2012年の9月に発売された(発表は8月)。

 コンパクトカーは人気のジャンルだから堅調に売れていたが、2016年11月にハイブリッドのe-POWERを加え、さらに売れ行きを伸ばした。

 同年11月には、軽自動車のN-BOXやプリウスを抑えて国内の販売首位になっている。

 この後も好調に売れて、小型/普通車では12月が2位、2017年1月は1位、2月は2位、3月は1位、4月は3位だ。ハイブリッドが好調に売れる時代ではあるが、発売から4年以上も経過した車種が、バリエーションの追加で販売ランキングのトップに立つのは珍しい。

 好調に売れる理由として、まずはノート自体の商品力がある。全高を立体駐車場が使いやすい1500mm以下に抑えながら(ノートe-POWERは1520mm)、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2600mmに達するから車内が広い。

 身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は握りコブシ2つ半になる。この余裕はLサイズセダン並みだ。頭上にも適度な空間があり、ファミリーカーとしても快適に使える。

 全長は4100mmだから運転のしやすい範囲に収まり、売れ筋グレードの最小回転半径は4.7〜4.9mだから小回り性能も良い。

 サイドウインドーの下端を低く抑えたボディにより、側方や後方の視界も優れている。高人気の背景には、このようなノートの素性がある。

 2つ目の理由はノートe-POWERの商品力と巧みな宣伝だ。ノートe-POWERでは直列3気筒の1.2Lエンジンが発電機の作動に使われ、駆動はリーフと同じ出力のモーターが担当する。エンジンがホイールを直接駆動することはない。

 そのためにエンジンは効率の良い運転が可能になり、売れ筋グレードのJC08モード燃費は34km/lと良好だ。モーター駆動だから加速も滑らかで、巡航中にアクセルペダルを軽く踏み増した時でも駆動力を素早く立ち上がらせる。

 さらにエコ/Sモードを選ぶと、アクセルペダルを戻すと同時に回生(減速力を使って駆動用モーターが発電を行い、電力を駆動用電池に蓄える制御)が行われ、充電効率を高めた。エコ/Sモードでは速度をアクセル操作のみで調節できることも特徴だ。

 従来のエンジン駆動車でいえば、低いギヤを使って走り続ける感覚になり、走行状態によっては停車するまでブレーキペダルを踏む必要がない。

 この新しい走りを低燃費と併せて効果的に宣伝したことも、ノートe-POWERが好調に売れた秘訣になる。

 そして3つ目の理由として、最近の日産にはコンパクトカーを含めて新型車が乏しいことも挙げられる。ウイングロードは発売から11年、キューブは8年、マーチも6年以上を経過して、この3車には緊急自動ブレーキを作動できる安全装備が用意されない。

 売れ行きも低迷している。人気車だったティーダは廃止された。しかも日産の本格的なハイブリッド車は、3.5Lのスカイラインやフーガのみになる。

 つまり上質感や付加価値を備えたコンパクトカーに対する需要、低燃費のハイブリッド車に向けたニーズが、ノートe-POWERに集中した。歩行者を検知できる緊急自動ブレーキの採用も魅力だ。

 表現を変えると、ノートe-POWERの高人気は、今の日産の国内向け商品に対する不満の裏返しでもあるのだろう。

ノートの積載性の高さも魅力のひとつ。後席の居住性もバッチリで、「使える車」としての評価は高い
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現行型(2代目)はデビューから5年だが、それでも売れまくっている
現行型(2代目)はデビューから5年だが、それでも売れまくっている

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