2024年3月25日、日産は自社の価値と競争力を向上させる新たな経営計画「The Arc」において、今後の日本市場における計画について発表した。主な内容は、乗用車ラインアップの80%を刷新して5車種の新型車を投入、電動車のモデルミックスを70%へ向上(乗用車)、そして、2026年度に年間60万台の販売を目指す(2023年は51万台)の3つだった。
2023年の国内日産の総販売台数はおよそ51万台。The Arcで掲げた目標である年間60万台を実現するには、あと3年で9万台増やす必要がある。ではあと9万台増やすにはどういった新型車を投入するべきなのか。筆者が考える新型車5モデルは、以下のとおりだ。
文:吉川賢一
写真:NISSAN
ノートとセレナ、サクラの活躍に支えられている日産
冒頭で触れたように、2023年の国内日産の総販売台数はおよそ51万台。もっとも売れたのはノート/ノートオーラの約10.2万台、2番手がセレナの約7.5万台、3番手がルークスの約7.0万台、4番手がデイズの約3.8万台、5番手がサクラの約3.7万台だ。絶好調なノート/ノートオーラとセレナ、そしてサクラの大活躍に支えられている一方で、日産車で話題に上がりやすいGT-RやフェアレディZは、販売台数における貢献度はごくわずか。軽商用車のほうがはるかに貢献している。
9万台増やすには、リーフとキックス、エルグランドのフルモデルチェンジのほか、新型車が2つ必要
まず、絶対に必要なのは新型リーフだ。現行リーフは2017年の登場とすでに8年目を迎え、BEVでありながら先進性が全く感じられない状況。特にインテリアが軽のサクラと比べても質が低く、400万円台のBEVとはとても思えない。日産BEVのイメージリーダーであり、グローバルで販売されるリーフは、早々のテコ入れが必要だ。新型リーフは、2021年に公開されたコンセプトカー「チルアウト」のようなクロスオーバーSUVになるというが、サイズ感については、現行リーフよりも小型化し、アリアと差別化したサイズのコンパクトSUVになると予測している。
そしてやり方によっては大幅な販売台数増が期待できるのが、先日北米で発表された新型キックスだ。現在のキックスの販売台数は、ライバルであるホンダ「ヴェゼル」の月販7,000台超に対して、その5分の1となる1500台程度。キックスは、質感に伴わない車両価格の高さが弱み。また廉価グレードとなるガソリンモデルがないのも弱みだ。新型キックスのデザインは評判がいい。ガソリンモデルが用意されれば、かなり台数が稼げるのではないだろうか。
ぜひ、新型エルグランドにも挑戦を!!
そしてぜひ、新型エルグランドで、ラージミニバン市場にも殴り込みをかけてほしい。新型エルグランドといえば、ジャパンモビリティショー2023に出展された「ハイパーツアラー」が記憶に新しいが、日産関係者によると、ハイパーツアラーのデザインやインテリアの造形はあくまでデザインスタディで、特定のクルマの将来デザインではないそう。ただ、ハイパーツアラーのアルファード/ヴェルファイアを狙い撃ちしたかのようなスタイルは大いに期待ができる。現在エルグランドは月販150台程という悲惨な状況だが、ハイパーツアラーのスタイルで登場できれば、大いに台数アップが見込めるだろう。
そして、現在日産ラインアップにない、トヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」のようなコンパクトミニバンの投入は、日産のシェア拡大には欠かせないと思う。デザインは、人気モデルである「セレナ」をぎゅっと縮めたようなデザインがいいだろう。日産のコンパクトミニバンといえば「キューブ」が思いだされるが、キューブは最終モデルまでリアドアをヒンジタイプだった。ただ、このカテゴリでは両側スライドドアが必須。ノート並の高い質感の内装を与えつつ、小排気量の安いガソリン車を設定すれば、ヒットは手堅いのではないだろうか。
そしてもうひとつ、人気上昇中の軽SUVにも挑戦してほしい。かつての日産のクロカンSUV「サファリ」を小さくしたような、その名も「サファリミニ」なんていいかもしれない。軽カテゴリでは、軽スーパーハイトワゴンと軽ハイトワゴンの次に、軽SUVが売れている。eKスペースのスキンチェンジでつくり出された三菱「デリカミニ」も、売り上げは倍以上に伸びたという。既存のデイズやルークスとは異なる、新しい意匠で登場すれば、こちらも人気モデルとなることができるはずだ。
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