社会的な通念からすれば「エッ、そうなの!?」ということが、トラックドライバーさんの仕事にはけっこうあります。
たとえば、高速代の自分持ちとかサービス荷役(無償で商品の棚並べまでやらされる)なども、一般の人からすれば「エッ!?」だと思いますが、ドライバーさんにはもう1つ重い枷が科せられるケースがあります。それが自腹補償です。
運送中などに起きた荷物の損傷、あるいは車両事故を起こした場合の修理費などをドライバーに支払わせるのが自腹補償ですが、その実態はまだまだ闇の中……。
今回は、長距離ドライバーのひろしさん、北海道在住ベテランドライバーのかんちゃんに聞いてみました。
文・写真/ひろしさん・かんちゃん・フルロード編集部
大手はともかく、ブラック企業では満額負担も
北九州小倉発の長距離ドライバー、ひろしです。荷物事故の自腹支払い、もちろんありますよー。
会社によって支払い方法は違うでしょうが、請求に対して保険の免責分のみの支払いとか、全額自腹とかもあるのが現状です。
商品の中身が大丈夫でも「カートン不良」で破損扱いとかもあります。カートンというのは箱のことですが、商品自体の箱じゃなくて、商品を入れている外装の段ボール箱のことです。
カートン不良の場合は、これも荷主次第ですがカートン代のみのとこもあるし、商品買取になる時もあります。
破損で請求が来たときは、その品物を引き取れる場合もあるし、お金は払うけど品物は受け取れないとかもあります。よく激安店とかに流通している商品の一部は、カートン不良で中身は大丈夫だったものとかが多いのではないでしょうか?
商品事故でこんな感じなんで、車両事故の場合も同じです。保険の免責分を運転手に請求する会社もありますし、中には満額を運転手に支払わせるブラックな会社も実際に存在します。
大手の会社とかは事故した場合、無事故手当のカットとかで済ませたりでしょうけどね……。
「運転手が100%負担」で会社を辞める
こんにちは津軽三味線トラッカーかんちゃんと申します。
自腹補償ということに関して、今では「何それっ!」って感じかもしれませんが、私がトラックに乗り始めた頃は、意外と当たり前のようにありました。
私は20歳から4トン車で運送業に従事していて、21歳で大型とけん引を取得してそれからずっとトレーラに乗っています。今年で運転手歴33年になります。まだまだ自分では若造と思っていたのですが、もうジジィの部類ですね。
今の会社には自腹補償制度は全く無いのですが、20歳からお世話になっていた会社にありました。事故を起こすと、一括で払うか給料から天引きするかで自腹補償していましたね。運転手の過失割合によって負担額は違いました。
運転手も「事故を起こした自分が悪い」という負い目があるので、皆さん仕方なく自腹補償していましたが……。小さな物損事故なら負担も少ないのですが、大型車で大きな事故を起こすと、負担額は200~500万円程度まで上がります。
ですから、損害額なんてどこまで上がるか見当もつきませんよね。そのころは運転手側の過失割合が100%だと損害額の50%負担でした。事故を起こすと、何年にもわたって給料から相当な金額が引かれてしまいます。
幸い私はほとんど事故が無く、給料から天引きされたことも無かったのですが、ある日突然、会社側から通達が……。「最近、運転手の事故が多いので、過失割合が100%の場合は運転手に100%負担してもらいます」ということに!!
これには「さすがについていけないな」と思い、次の就職先のあてもないまま、この会社を退社させていただきました。
この会社には運転手のイロハや4トン車・大型車・トレーラと本当にいろいろな経験をさせていただいたので本当にありがたかったのですが、事故損害額の100%負担はさすがにおかしいかなって思いまして……。
そして、大型車専門のタイヤ屋さんでアルバイトしていたら運送会社の整備課長さんからお誘いを受けて、今の会社にお世話になっています。
この世の中、小さな物損事故であっても、運転手が事故を起こすと会社内で本当にめんどうくさいことになります。
だから気をつけたりするという側面もありますが、自分のトラックの小さな物損事故の場合、数千円くらいのパーツなら自分で買って自分で交換なんてことも、無きにしもあらずです。
それにしても業務中に起こしてしまった事故を、運転手個人が100%負担するのはどうかと思いますよ。せめてボーナス減額くらいにしてって感じですよね。
【画像ギャラリー】走行中の荷崩れが気になる自腹補償制度(5枚)画像ギャラリー