大地震発生! 負傷者も!! 新幹線はそんな時どうする? JR九州の異常時訓練に潜入!!

■地震! 停電!! そのとき新幹線はどうなる??

 車内で昼食休憩をとったのち、続いては「大地震発生に伴う運行不能時の対応訓練」が始まる。

 訓練開始と共に、我々を乗せた「かもめ」は一路、武雄温泉を目指して出発。大村湾を横目に順調に加速を続け、ほどなくして時速は西九州新幹線の最高速度、時速260kmに到達した。すると突然、車内の明かりが暗くなり、非常用の客室灯のみが点灯。そして急制動がかかる。同時に「ただいま地震が発生し、それに伴い停電が発生しました。この列車は非常ブレーキで停車します」と車内放送が流れた。

現状を把握するために乗務員が車内をまわる。「お客さまの中に医療関係者の方はいらっしゃいませんか」と呼びかけた
現状を把握するために乗務員が車内をまわる。「お客さまの中に医療関係者の方はいらっしゃいませんか」と呼びかけた

 この時、発生した地震は震度7程度と設定され、大規模な地震が発生すると自動的に送電所は送電をストップさせる。新幹線車両は停電を検知するとすぐに非常ブレーキがかかり、可能な限り最短距離で停止するように設計されている。そのため、今回も急ブレーキがかかったというわけだ。

 一方で、可能であれば橋りょう上やトンネル内といった、避難誘導や列車火災時などの二次災害のリスクが少ない箇所で停車するほうがより安全ではある。

 そこで西九州新幹線で運行されているN700S車両には、停電時にも自走できるように車載バッテリーを積んでおり、緊急停車後、先述のような箇所で停車した場合には運転士が運行を管制する指令所にその旨を報告。指令の判断により、必要であればこのバッテリーを用いて、より安全な箇所まで自走して停止する。

 また、止むを得ず停電中の車内に長時間留まるような状況を想定し、3号車のトイレのみスイッチを取り扱うことで、停電中でも使用ができるようになっている。

 今回は、橋りょうでもトンネルでもない箇所に停車。すぐに乗務員たちは状況を把握しに車内を巡回。すると、車内には複数の負傷者がいる模様だ。乗務員たちは車内に医療関係者がいないか、協力を呼び掛ける。一方で、車外には通報を受けた消防と警察が到着。早期の運転再開は見込めないことから、速やかに車内に乗り込み、負傷者の救護と乗務員と協力しながら、乗客の車外避難誘導を行う。

 負傷者に対しては搬送や対応の優先順位を決める「トリアージ」を実施。今回の大地震のように大規模災害時にはまず現場に駆け付ける消防、警察がトリアージを行う。「○○さん、わかりますか? 痛いところはありますか? 大丈夫ですよ、頑張りましょう」と負傷者に寄り添いつつも、裏ではすみやかに搬送、避難の段取りを付けていく光景はプロフェッショナルそのものだ。

 各所の調整がつくと、トリアージの順序に沿って重傷者から車外に搬送。負傷の無い乗客は自ら乗降口に架けられたステップを降りて、今回は至近距離の嬉野温泉駅まで新幹線の線路上を徒歩で避難した。

消防・警察に続いて佐賀県DMAT(災害派遣医療チーム)も到着した
消防・警察に続いて佐賀県DMAT(災害派遣医療チーム)も到着した

■「鉄道の根幹」ともいえる安全安定輸送

 今回の訓練を総括し、JR九州 福永嘉之鉄道事業本部長は「課題も見つかった」と話す。「大規模災害時は、弊社社員だけでなく警察、消防との連携が欠かせない。また、お客さまへのまめなご案内等、連絡面についてより改善していきたい」と訓練を振り返った。なお開業後も定期的に同様の訓練は行われる予定だ。

 新規開業に際して華やかなイベントが続く西九州新幹線。その一方で「鉄道の根幹」ともいえる安全安定輸送を維持するための訓練がこうして行われている。

【画像ギャラリー】新幹線の「安心安全」を築き上げるための訓練が繰り返される!!(14枚)画像ギャラリー

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