世界で生産されるスバル車の98%がAWD(全輪駆動)モデルというほど、AWDにこだわっているスバル。
「スバル車といえばAWD」というイメージをお持ちの方も多いことでしょう。
スバルのAWDは、シンメトリカル(左右対称の)AWDと呼ばれ、スバルはこれまで、この独特のドライブトレーンにこだわってクルマ作りをしてきました。
だからこそ、スバルは日本市場でも北米市場でも、大きく成功できたと考えられます。スバルが、これほどこのシステムにこだわる理由は何なのでしょうか。
そしてこの仕組みの利点と欠点はどこにあるのか。簡単に解説してみます。
文:立花義人、写真:スバル、トヨタ
スバルこだわりのエンジンとは?
スバルこだわりの水平対向エンジンは、シリンダーが水平に寝ており、それが左右一対で向かい合う形式です。シリンダーが水平に寝ているため、直列式やV型に比べてエンジンの全高を低くすることができます。
スバルは、この水平対向エンジンのメリットを生かし、重量物であるエンジンの位置を低くすることで、重心を下げつつ、エンジンの中心部分に位置するクランクシャフト、
そしてトランスミッションからリアデフに至るまでを、一直線上に配置し、シンメトリカル(左右対称)の重量配分となるようにしました。
この重量配分によって、4輪のタイヤにバランス良く荷重をかけることができ、AWDによるメリットをより一層高めることが可能となりました。
スバルは低重心かつ理想的な重量配分をもたらすこのシステムによる恩恵を最大の強みと考え、シンメトリカルAWDと呼んでいます。
シンメトリカルAWDは理想的?
ほとんどのFF車は、直列エンジンを横置きに搭載しています。
FFであれば、駆動系のパーツをエンジンのすぐそばに配置することができるため合理的ですが、この方式を4WD化する場合、横向きの出力を縦向きに変換するための機構が必要です。
なぜなら、横置きのため、クランクの回転方向がプロペラシャフトの回転方向と90度異なっているからです。そうなると、重量増や走行抵抗増につながり、燃費も悪くなります。
いっぽう、エンジンを縦置きにすると、ドライブトレーンを一直線上に配置できることに加え、FFの4WDに比べて、機構は簡略化でき、駆動ロスを少なくすることができます。
ただし、一般的な直列エンジンを縦置きにした場合、スペース効率は悪くなってしまいます。
その点、スバルのシンメトリカルAWDは、低く、長さの短いエンジンを縦置きで積むことができるため、車重の増加を抑え、効率の良いトルク伝達と優れたパッケージングの点で、他のシステムより優れているといえます。
スバルは当初、すべりやすい路面での発進や悪路走破性能を高める目的で四輪駆動を採用していましたが、様々な技術革新によって、このシンメトリカルAWDのメカニズムを推進・熟成させてきました。
近年では緻密な電子制御により、あらゆる路面状況が変化する中での高速走行安定性や、快適で安全に走行するためのシステムへと成長しています。
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