近年、高齢者による逆走運転やアクセルとブレーキペダルの踏み間違え、あるいは病気による交通事故があとをたちません。今後の後期高齢化社会を考えると少し不安があります。
高齢者に対し、免許更新時はどういうことを行っているのでしょうか? 「75歳以上の免許更新」の時には特別な講習があるそうですが、事故抑止の効果が期待できる内容なのでしょうか。その中身を調べてみます。
文:ベストカー編集部
すでに始まっている高齢者ドライバーの対策
NEXCOの最新データによると、高速道路で交通事故もしくは車両確保に至った逆走事案は541件(2011~2013年)あるという。そのうち65歳以上の運転者が占める割合は68%にのぼります。
また75歳以上の人が運転していた死亡事故の割合も年々増える傾向にあります。
こうした高齢者の運転による事故を防ぐために、実は2009年から「75歳以上の運転免許更新」の内容が改正されています。主な改正点は「認知症検査の義務づけ」。具体的に何をやっているのか、警察庁・広報へ聞き、まとめてみました。
75歳以上からの「高齢者講習」
「75歳以上の運転免許更新」は各都道府県の指定教習所で実施され、75歳以上の方は認知症などの対策として、まず「予備検査」を受けてもらいます(料金は30分650円)。当日の月日や曜日などを書いたり、イラストを見て記憶力をテストするなどの検査を行います。この判定結果は3段階あり、各段階に応じて(コースに従って)、「高齢者講習」を受ける流れになっています(3時間5200円)。
その「75歳以上の高齢者講習」の具体的内容を以下にまとめてみました。
■座学
高齢者が起こしがちな事故の実態に即して、逆走、片側へのはみだし、一時停止見過ごしなどを学ぶ。安全運転の心得を再度、認識するもの。
■適性検査
自動車操作検査機というものを使い、夜間視力、動体視力、視野検査、精度を高めた聴力検査などを行う。通常の(若い世代の)検査の中身を濃くしたようなもの。
■実車
教習所のコース内で実施。一時停止、見通しの悪い交差点での走行、S字カーブ、坂道走行……など、高齢者が不得意だったり、見落としがちな部分を走行し、検査官と確認する。ひとり10~15分。
※ちなみに、ほかの都道府県でも受講できる「シニア講習」や、バスやタクシー運転手などの経験者対象の「チャレンジ講習」などもある(いずれも受講内容は同じ)。
あくまで講習であって試験ではない
「75歳以上の高齢者講習」は以上のような内容だが、これらは“講習であって試験ではない”という点がポイント。つまり、受講させた側が「あなたは判断力が劣っているので、そろそろ運転をやめてください」とは言えないのです(強制力がない)。「人間の心理として一度取得したものはなかなか手放さないのですよ」とは広報の方。
が、どうやら来年4月から変わるもようです。
例えば「認知症の疑いがあるので、医者のお墨付きの診断書がないとハンドルは握れないのですよ」というような通達を出して、運転免許証の自主返納を促すことを来年4月頃から実施する、という改正の流れになっているとのこと。“大きな変革の一歩”となりそうです。
編集部註:この取材後、7月に認知ドライバーへの対策が強化された改正道交法の施行が閣議決定された。来年の2017年3月12日から施行される。
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