ダイハツが東京オートサロン2025に持ち込んだ防災支援車と災害支援車。速い・美しい・カッコいいとは少し離れた「社会と人のためになるカスタム」を施されたクルマたちだ。一風変わった展示だったが、この2台に込められた想いがとても深かった。地域に寄り添い、日々の暮らしを守るクルマとは一体どんなものなのか。
文/写真:佐々木 亘
【画像ギャラリー】この発想には驚かされた!! ダイハツさんいざというときは頼りにしてますよ!!(13枚)画像ギャラリー■社会インフラにもなれるカスタムカー
出展したのはアトレーをベースにした「アトレーWILDRANGER2」と、ハイゼットトラックリフトをベースにした災害救援車だ。
アトレーWILDRANGER2は、黄色と黒のボディカラーにルーフキャリアやサイドオーニング、マッドガードやIPF製ルームランプ、オリジナルのアンダーガードに外部電源を備える。ラゲッジスペースには防災アイテムや災害時に使用できるバッテリーなどを積み込んだ。
ハイゼットトラックリフト災害支援車は、オリジナルのリフトやハードカーゴ製キャリア、オリジナルの幌をつけ、300Lの水を貯められるタンクやホース類、電源などの防災道具一式も積み込む。
どちらの車両もオールテレーンタイヤ(ヨコハマタイヤ・ジオランダーX-AT)を履き、災害発生後の舗装の壊れた路面や、液状化現象などが発生して泥や砂で覆われた路面の走行を想定していた。道なき道を突き進まなければならない、災害支援車ならではの装備と言えるだろう。
一体なぜ自動車メーカーが注力して、こうした災害支援車を製造し、オートサロンへ展示するに至ったのか。製作の理由や思いを聞いてきた。
【画像ギャラリー】この発想には驚かされた!! ダイハツさんいざというときは頼りにしてますよ!!(13枚)画像ギャラリー■「二度と使わない方がいい」クルマを作り上げる意味とは
災害支援車を作りきっかけになったのは、2016年の熊本地震だったという。当時は行政の指示を待って災害支援に動き出していたのだが、2017年に九州北部豪雨が発生するとボランティア活動へ能動的に関わり出している。
この時に「自動車メーカーとして、もっと役に立てることは無いか」という思いが強くなり、ハイゼット災害支援車の企画が本格的にスタートした。
以降、九州地域の方々と協力しながら、実際のボランティア活動で得た知見や、ボランティアスタッフの意見なども聞き、年々アップデートを続けている。2023年に発生した九州北部豪雨の際には、実際にハイゼット災害支援車を被災地域へ投入し、災害現場の復旧活動を支援してきた。
このハイゼット災害支援車を作り、いつでも出動できるようにしている意味は2つあるという。1つは、BCP(Business Continuity Planning 訳:緊急事態時事業継続計画)の観点から、災害発生時に事業所や社員を守るためだ。
もう1つは、災害発生地域に対して2次的3次的支援をするクルマとして稼働させるため。ボランティア活動や災害復旧の後方支援を、ダイハツが担うという。
特にダイハツグループ九州開発センターのある九州一帯では、水害が非常に多く発生するため、災害支援車も水害に強く、水害発生時の復旧に役立つような装備を多数そろえている。
このプロジェクトの凄いところは、実際の現場に積極的に入り、そこで「アレが足りない、コレが足りない」と身をもって体験してきたことをフィードバックし、車両のアップデートに繋げているところだ。さらに災害支援車・災害救援車の台数を増やすことも考えているという。
今後の展望も聞いてみたところ、次は土砂運搬などを想定しながら、特殊車両の軽ダンプをベースに新しい支援のカタチを模索しているという答えが返ってきた。
取材の最後に仰っていた「(九州北部豪雨で出動したハイゼット災害支援車は)二度と使わんのがいいんですけど」という言葉が、筆者には強く響いた。
カスタムによって生まれる社会インフラの強化は、カスタムの新しい意味として理解されると思う。こうした取り組みが広く理解され、賛同者が増えていくことを期待したい。そしてダイハツは、次世代の日本を下支えする、縁の下の力持ち的な存在になっていくだろう。
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