電動化が加速するいま、若いクルマ好きにあえて伝えたい1台がある。速さやスペックではなく、「操る基準」を体に刻むことができるモデル。内燃機関の時代が終わりに向かう前に触れてほしい存在とは何か。市販車からレーシングカーまで、数々のクルマに乗ってきたプロのドライバーが若者たちに語りかける。
文:中谷明彦/画像:BMW
【画像ギャラリー】え、教習車仕様のBMW 3シリーズなんてあったの!? 教官用の補助ブレーキまでドイツ製じゃん!!(20枚)画像ギャラリー内燃機関を楽しめる最後の時代に……
ありがたいことに、約半世紀にわたり、レーサー・自動車評論家・開発ドライバー・インストラクターなどプロ・ドライバーとして様々な活動をさせてもらってきた。市販車からレース車両まで多岐にわたり経験してきたが、そんな私がいまクルマ好きの若者に「乗っておかないと損をする1台」を是非紹介しておきたい。
昨今、自動車の電動化の波は不可逆である。ハイブリッドやBEV(バッテリーEV)が主流となり、内燃機関は急速に存在感を失い、選択肢の外側へと退き始めている。
しかし、車を操る歓びの本質はどこにあるのかと問えば、多くの愛好家は依然としてガソリンエンジンを操ることと組み合わせて挙げるだろう。回転上昇のリズム、駆動輪へと伝わる機械的手応え、加減速の荷重移動に応じて姿勢を変える車体挙動。それらは数値では語り尽くせない体験である。
実はねらい目な90年代のヨーロッパ名車!
だが新車市場に目を向ければ、ハイパワーでスポーティなモデルは減少し、価格は高騰している。若い世代にとって現実的な選択肢は限られてしまっている。新車が無理ならば、視線を中古車市場へ向ける事も検討すべきだ。
希少価値の高い車はすでに価格高騰しているが、真価に気づかれていない「基準車」はまだまだ残っている。その筆頭に挙げられるのがBMW 318iのマニュアル(MT)仕様である。 E36型は1990年代の3シリーズを代表する世代だ。1.8L直列4気筒自然吸気エンジンをフロントミドシップ寄りに縦置き搭載し、後輪を駆動するFRレイアウト。
そしてほぼ50:50の前後(左右も)重量配分。数値だけを見れば平凡に映るかもしれない。しかし重要なのは絶対出力ではなく、シャシーとステアリング、サスペンションジオメトリーが織り成す総合バランスである。
【画像ギャラリー】え、教習車仕様のBMW 3シリーズなんてあったの!? 教官用の補助ブレーキまでドイツ製じゃん!!(20枚)画像ギャラリー1.8L直4という楽しみ! BMWらしいボディ剛性
E36の318iは、アクセル開度と舵角、横加速度の関係が極めて素直だ。限界域へ近づく過渡領域が連続的で、ドライバーは車両の挙動を予見できる。これこそが「操る喜び」の源泉である。 いつの時代も BMWは、ファミリーセダンであっても運動性能に妥協しなかった。
上級の6気筒搭載車やMモデルが注目されがちだが、むしろ4気筒の318iにブランド哲学は凝縮されている。出力に頼らず、正確なライントレース性と高いボディ剛性で勝負する。その思想はE46へも継承され、質感と安定性をさらに高めた。
実際、多くの自動車メーカーのテストドライバーが、この世代の318iをベンチマークに据えてきた。直進安定性、回頭初期の応答、ロールの立ち上がり方、そして旋回中の舵角に対するヨーモーメントの比例性。これらが高次元で整合している。路面の接地感とブッシュ類の撓み、振動や衝撃のいなしが芸術的なのだ。
リミテッドスリップデフを備えなくても、アクセルワークだけで姿勢を制御できるのは、シャシーの基本設計が優れている証左である。象徴的なのが、走行ライン上のクルミを正確に踏み割るという広告表現だ。誇張に思えるかもしれないが、実際に走らせれば、それが再現性を伴う事実であることが理解できる。
ステアリング入力に対する車体の応答が曖昧であれば、狙った一点を踏むことなど不可能だ。E36/E46の318iは、その精度を日常速度域で体験させてくれる。























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