日本では20年以上前から次世代のモビリティとして注目されていた超小型モビリティは、話題性は充分だったが、一般に普及することはなかった。
東京モーターショー2019には数多くの超小型モビリティが出展され百花繚乱のにぎわいを見せていた。
これまで普及に失敗している超小型モビリティだが、日本でも超小型モビリティの時代がようやく到来するのか? 超小型モビリティを20年以上にわたり取材を続けている西村直人氏が考察する。
文:西村直人/写真:西村直人、TOYOTA、NISSAN、HONDA、トヨタ車体、平野学、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】超小型モビリティ時代到来を予感させる東京モーターショー2019に出展された精鋭
東京モーターショーにも多数出展
必要最小限のエネルギー量で、一人、ないしは2人が移動することのできる乗り物を世界では「パーソナルモビリティ」と呼んでいます。日本では国土交通省のもと、この新種の乗り物を「超小型モビリティ」として定義付けしました。
筆者(西村直人)は20年以上、パーソナルモビリティの開発者に取材を行い実際に試乗も重ねてきました。来る普及を心から望んでいます。
第46回の東京モーターショー2019には、こうした超小型モビリティの枠組みで捉えられる乗り物がたくさん出展されていました。
「FOMM」、「E-RUNNER ULD1」、「e-Apple」、「Microlino」など、独創的なデザインをまとった近未来型や、往年の名車をイメージさせる懐古主義派までさまざまですが、いずれも電気自動車であること、そして1人ないし2人乗りであることが共通項です。
トヨタの参入で状況はガラリと変わる
パーソナルモビリティ(超小型モビリティ)は30年以上前から世界中で注目されてきました。日本では2000年8月、トヨタ車体から初代「コムス」が発売され約2000台を販売、2012年7月には2代目となり大幅改良が施され同年7月末には約1000台の受注を記録しています。
法人需要としてコンビニエンスストア「セブンイレブン」での配送業務や各企業での宅配・巡回サービス業務など幅広く利用されていますが、残念ながら個人需要は多くありません。正確には需要はあるものの、存在が知られていないため販売に結びついていないという現実があります。
2020年、トヨタ自動車が超小型モビリティに参入します。2019年6月に開催された「トヨタのチャレンジ、EVの普及を目指して」と題された電動化説明会では、トヨタ自動車の寺師副社長から乗車定員2名で最高速度60㎞/h、1充電あたりの走行距離を100㎞に設定した「超小型EV」を発売することが発表されました。個人向けと法人向け(ともにリース販売と予想)として2タイプのボディバリエーションが用意されるとのことです。
トヨタの表明により、これまで何度も普及すると言われては立ち消えとなっていた超小型モビリティが本格的に普及します。すでに交付するナンバープレートの色の選定も終了し(オレンジ色ではないかと予想)、道路交通法や道路運送車両法、保険制度との整合性をとる最終段階にきているからです。
トヨタは超小型EVの存在意義について「乗用車の電気自動車を普及させるために展開する」としています。トヨタがまとめたEVに期待する声には、「クルマに毎日乗るが長距離は走らない」、「乗るときは1人か2人」、「誰もが安心して自由に移動できること」などがあり、超小型EVはそうした声に応える形で販売されるのです。
つまり、需要があるところに供給するという経済活動の原理原則に基づいた図式が描けるからこそトヨタが販売を行う、となるわけです。
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