高速道路は走れないが、専用の衝突安全基準が存在
国としても超小型モビリティには前のめりです。2010年には道路運送車両法における超小型モビリティの立ち位置が示されています。大まかに区分を説明すると、 「ミニカー」(第1種原動機付自転車) 以上で 「軽自動車」 未満が超小型モビリティの枠組みとしてふさわしい、という解釈がなされていました。
ご存知のように軽自動車では高速道路の走行が許されていて、衝突安全基準が設けられています。ボディサイズは3400㎜以下×1480㎜以下×2000㎜以下(全長×全幅×全高)、排気量は660cc以下、乗車定員は4名と定められています。
いっぽう、ミニカーは高速道路の走行ができず、衝突安全基準もありません。2500㎜以下×1300㎜以下×2000㎜以下(同)と軽自動車から二回りほど小さく、排気量は50cc以下、電気モーターであれば定格出力0.6kW、乗車定員は1名です。
今回普及を目指す超小型モビリティは「近距離専用の新たなクルマ」という位置づけから高速道路は走行できませんが、専用の衝突安全基準(例/軽自動車より緩和された基準)が必要であるとし、ボディサイズは「軽自動車より小さくて運転しやすいサイズ」と定められ、乗車定員は2名です。排気量や定格出力は現時点では未定ですが筆者(西村直人)は定格出力15kW以内と予想しています。
日産、ホンダも精力的に実証実験を展開
日産は「NISSAN New Mobility CONCEPT」(NMC)として日本各地で実証実験を行っています。この車両はルノーでは「Twizy」と呼ばれ欧州連合におけるL7カテゴリーの車両として販売もされています。
日本で試乗した簡易ドア付NMCの車両重量は500kg(ドアなしは470kg)と軽自動車の約60%で、速さを決める定格出力は8kW(瞬間的な最高出力は15kW)、加速力を示す最大トルクは57N・mと、250ccのビッグスクーター並みの出力と軽自動車のNAエンジンと同等のトルクを発揮します。
日産「リーフ」がそうであるようにEVはアクセルを踏んだ瞬間に最大トルクを発揮するモーター特性のため加速力は鋭く60km/hまでの発進加速性能は約6秒弱でした。
ホンダの超小型モビリティ歴は30年以上と古く、また2012年からは「MC-β」を使って実証実験を主に埼玉県、熊本県、沖縄県宮古島で行ってきました。
定格6.0kW/最大11.0kWのモーターで後輪を駆動し、リチウムイオンバッテリー(約7.0kWh)は床下に搭載しています。
一般的な電気自動車と変わらないため運転操作は簡単で、キーシリンダーを右に回してシステムを起動し、メーター左下に設けられたDレンジボタン(ホンダ車のサンルーフスイッチを流用)を押し、アクセルを踏み込めば走り出す。日産NMCと違いクリープ走行ができるため微速でのアクセル操作も容易でした。
今から64年前、当時の通産省主導で行われた「国民車構想」は官の色が全面に出てしまったこともあり結局は立ち消えになりましたが、その影響を受けた自動車メーカー各社の切磋琢磨により、日本の自動車産業が世界に誇る成長を遂げたことも歴とした事実です。
その点、超小型モビリティは、国の政策と自動車メーカーからの提案が合致した好例といえるのではないでしょうか。満を持しての登場となる超小型モビリティを引き続き応援してきたいと思います。
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