毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はダイハツ エッセ(2005-2011)をご紹介します。
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文:伊達軍曹/写真:DAIHATSU
■「シンプル・おしゃれなカジュアルミニ」をコンセプトに、軽の本質を徹底追求
「シンプルかつ安価であること」「それでいて走行性能とデザイン性にも不満がないこと」を追求した結果、特に5MT仕様は「当時の欧州コンパクトカーも顔負けの魅力と実力」を備えてしまった軽自動車。
それが、2005年から2011年まで製造販売されたダイハツ エッセです。
5ドアハッチバックであるエッセのベースとなったのは6代目のダイハツ ミラですが、ミラとエッセでは搭載エンジンも内外装デザインもまったく違うため、「直接のベースモデル」というのとはちょっと話が異なります。
同時期のダイハツ タントなどは、ご存じのとおり軽自動車規格のサイズをフルに使い切って「より広く、より便利な車になる」ということを主眼にしていました。しかしエッセは、全高も全幅も規格以下でした。
つまりエッセは「モア&モア(もっともっと!)」を目指した軽自動車ではなく、「足るを知る」といったニュアンスを重視した、どこか欧州車的価値観を持ったな軽自動車だった……と言うことができます。
そのインテリアの各部は鉄板むき出しだったりもするのですが、そこをボディ同色に塗装することで「逆におしゃれ」という感じになっているのが、エッセという車が目指した世界観の典型的な例でしょう。
搭載されたエンジンは、当時のミラとは異なる新開発の3気筒12バルブ「KF-VE型」。連続可変バルブタイミング機構「DVVT」により、低速域から高速域までなかなかの力強さを発揮しました。
このエンジンは多くの部品にアルミニウムや樹脂を積極的に採用することで、47kgという超軽量な単体重量を実現しています。
このKF-VE型エンジンはノンターボではありますが、その最高出力は軽自動車用エンジンの自主規制値である64psに迫る58ps。
さらには(グレードにより微妙に異なりますが)車重がおおむね700kgぐらいと「超軽量」であることと相まって、ダイハツ エッセの走りは非常に軽快なものでした。
またエッセはチューニング用パーツもそれなりに販売されていて、なおかつそういったパーツが効果的にハマる車でもありました。それゆえエッセはいわゆる女子ウケをしただけでなく、「男子ウケ」も一部ではしていたのです。
そのためエッセは決して不人気車種ではなく、発売当初は年間5万台以上が売れていました。さらにはモデルライフの終盤でも、3万台以上はコンスタントに売れていたのです。
しかしながらエッセは2011年8月、実質的な後継モデルであるダイハツ ミライースの生産が始まるため生産終了となり、同年9月には販売も終了となってしまいました。
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