2024年末から2025年初頭にかけてのホンダ&日産の統合を巡る一連の動き。それに象徴されるように、2025年の自動車業界にはまだまだ大きな波が起きるかもしれない。2024年の世界と日本の自動車業界の動きを振り返り2025年を展望する。
※本稿は2025年1月のものです
文:中西孝樹/写真:日産、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2025年2月10日号
EV需要の低迷から始まった戦略修正
2024年は世界の自動車メーカー大騒乱の年となった。トリガーは世界的な先進国における電気自動車(EV)需要の低迷に端を発した各社の戦略修正にある。一方、中国新エネルギー車需要は拡大を続け、EVで圧倒的な規模を獲得した中国メーカーは大躍進し、世界市場を侵食し始めた。
2025年には米国新大統領「トランプ2.0」が発動する。関税と環境政策の大転換が予想されている。この対策も含め、米ゼネラルモーターズ(GM)、独フォルクスワーゲン(VW)は大リストラを遂行した。2024年末は、ホンダと日産自動車の歴史的な経営統合を巡るニュースで締めくくった。
コロナ禍以降の好業績から国内自動車産業は急速に業績が悪化し始めている。最大の要因は新車販売奨励金(インセンティブ)の増加である。強烈な影響を受けたのが日産であった。上半期の営業利益は前年比90%減の329億円に留まり、インセンティブ支出は上半期合計で2000億円もの減益要因となった。
日産は通期の営業利益予想を大幅に下方修正、2024年3月に発表したばかりの中期経営計画の目標も取り下げ、9000人のリストラ、20%(100万台)の生産能力削減を含めた構造改革を発表する大波乱の決算となったのである。
日産の業績不振が、ホンダ・日産の世紀の経営統合のトリガーとなった。
両社は電動化・ソフトウェア領域における包括提携を2024年の3月に発表済みであった。8月のアップデートにおいては、数多くの取り組み詳細を発表したが、どう実行するかの手段が欠落していた。
企業文化が大きく違う両社が対等の立場でアライアンスを進めようにも、決断と実行を進める統治(ガバナンス)構造が欠落していることが課題と認識されていた。
しかし、両社は一転経営統合に向けた協議に入る覚書(MOU)を交わし、正式に持ち株会社の統合比率など詳細の検討に入った。破談リスクがゼロとは言わないが、退路を断ったアライアンスが、これまで劣勢を強いられてきた国内自動車産業の国際競争力の回復につながる転換点となることを期待したい。
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