■現状国産車で唯一のSUVのPHEV車
2019年12月10日、三菱自動車はアウトランダーPHEVの給電機能体験と、今年(2019年)9月に発生した千葉県豪雨災害での給電支援実績および今後の支援体制について説明会を開催した。
アウトランダーPHEVは、現時点で国産車唯一のSUV車の(給電可能な大容量バッテリーを搭載する)PHEVモデルであり、その真価は災害における大規模停電時に発揮される。
アウトランダーPHEVには13.8kWhのバッテリーと45Lのガソリンタンクが積まれており(バッテリーが切れてもガソリンがあればエンジンを回して充電できる)、100VのAC電源(1500W)×2からスマホやテレビ、ドライヤーや炊飯器、冷蔵庫への給電が可能になる(一般的な家庭の1日の使用電力量や約10kWh程度)。この給電機能が、大規模停電時に強い味方となってくれる。
冒頭で述べたとおり、今年9月に発生した千葉県豪雨では、台風15号の影響で首都圏で死亡者1名重軽傷者150名、建物被害全壊342棟、半壊3927棟、千葉県内で送電塔2本と電柱84本が倒壊し、千葉県内と神奈川県内を中心に実に93万戸が停電した。
この豪雨被害では、道路被害も大きく、交通が寸断されたことにより復旧作業が大幅に遅れ、停電被害は異例の長期にわたることになり首都圏における災害対策に課題を突き付けるかたちになった。
三菱自動車は発災から3日後の9月12日より各自治体に「給電機能のあるアウトランダーPHEVを派遣する用意がある」と連絡。千葉県内の販売会社と連携して6台のアウトランダーPHEVを用意して、12名が現地に入り、泊まり込みで支援したという。
■夏場の被災地では洗濯機も重要
「鋸南苑という特別養護老人ホームに伺ったのですが、最初は照明で、次に冷蔵庫、電子レンジ、バッテリーの減り具合を見て、これは大丈夫だろうということで洗濯機を回しました。まだだいぶ暑かったので洗濯機を回せたのはよかったですね」
と語るのは、実際に現地で支援した三菱自動車の国内営業本部 国内ネットワーク開発部の金子律子氏。アウトランダーPHEVのバッテリー充電ぶんはほどなく使い切ったが、その後はガソリンエンジンで充電し、数日稼働し続けてもまったく不安はなかったという。
このほか君津市の特別養護老人ホーム「上総園」や同市「あんしん君津」、南房総市の保健福祉部などにもアウトランダーPHEVを派遣し、給電車として活躍したそう。
活躍したいっぽうで課題も見つかっており、その最たるポイントが「支援が必要な自治体を探すのに、手当たり次第に連絡するしかなかった」(前述の金子氏)という点。実際に県、市、町へ連絡したあとで待つしかなかったという。
これをクリアするためには平常時、事前に協定を締結しておいて、防災訓練や給電機能の周知に勤めつつ、有事の際にはすばやく給電車を派遣できる体制を整えておくことが重要だという。
三菱自動車は現在、京都府や静岡県、北海道札幌市など10の自治体と災害時協力協定を結んでおり(2019年12月10日時点)、約40の自治体と締結に関して相談中とのこと。2022年までには全国の自治体との締結を目指している。
今回の取材では、実際に目の前でアウトランダーPHEVから電源をとって、テレビを映し、加湿器をつけ、炊飯器で炊き込みご飯を作ることができた。
クルマの付加価値が注目される令和の時代、アウトランダーPHEVを持っていると、災害時に電気を供給できるという強力なプラスオンが得られることを実感した。
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