2026年5月14日、本田技研工業が2026年3月期の決算を発表した。売上高21兆7,966億円、営業利益- 4,143億円、当期純利益(損失)は-4239億円——ホンダは上場以来、初めての赤字決算となった。EV戦略の見直しに伴う1兆5778億円という損失を一括処理した結果であり、数字だけ見れば衝撃的だが、いっぽうでホンダは同日、新型車の投入予定を続々公表。今後2年間で新型HEVを15車種投入とのこと。ホンダ三部敏宏社長は噂されていた退任はせず継続、「止血して、過去最高益へ」という明確なロードマップを打ち出した。こういう極端な姿勢、ホンダらしさ、クルマ屋らしさが戻ってきたと考えます。以下、決算内容と同日公開された「ビジネスアップデート」の内容を速報ベースでお伝えします。
文:ベストカーWeb編集局長T、写真:ホンダ、ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】ホンダ会見会場にあったえらいカッコいい新型車と2026年3月期の決算資料。た…頼むぞ!!(43枚)画像ギャラリー北米中心の「EV損失」1.5兆円を一気に全部払った
今期のホンダ決算は純利益(損失)▲4239億円という結果となった。ホンダは今年3月の時点で「北米市場で投入予定だった(発売直前だった)0(ゼロ)シリーズを含むBEV3車種の撤退(開発休止)、ソニーとの協業企画であるアフィーラも中止、EV関連損失は約1兆5000億円、これを今期と来期で計上していく」という衝撃の発表があったが、この巨額の負債を今期分で背負いこんだかたちとなる。
決算内容の内訳を見ると、今期におけるEV関連損失の合計は1兆5778億円にのぼる。北米で計画していたEVモデルの開発・上市中止に伴う開発資産・製造設備の減損(6439億円)、戦略変更に伴う取引先への補償や契約解除コスト(5,426億円)、第3四半期までに積み上がっていたEV関連損失(2,671億円)、そして中国の合弁会社に係る持分法損失(1,241億円)——。大変な損失だが、これらはいずれも「過去のEV戦略」の後片付けであり、ホンダの本業の稼ぐ力とは切り離して考えることも可能。
EV損失を除いた調整後営業利益は1兆393億円、調整後当期利益は7,955億円。売上収益は21兆7,966億円と、前年比0.5%増を確保した。二輪事業はインド・ブラジルを中心に2,210万台という過去最高の販売台数・営業利益を達成している。「EVのツケを今期に全部払った」と考えると、それはそれで経営戦略として正解とも考えられる。どこで「回れ右をするか」という判断において、「まあ無謀だったと思うけど、早めに決断したな」という印象。
会見で記者から「上場以来初の赤字の責任をどう取るのか」と問われた三部社長はこう答えた。「早期の止血を行い、なにがあっても耐えられる体制をつくっていくことが、私の責務だと思っています」。退任ではなく、前進——。三部社長就任時の2021年の状況と会社の規模を考えれば「2040年までにBEVに全振り」は、悪くない賭けではあった。ただ状況が変わった。変わったからには別方向に全振りする。その覚悟を示した言葉だった。
「2040年BEV100%」目標は取り下げ。でもカーボンニュートラルは諦めない
会見では、ホンダがこれまで掲げてきた「2040年までにBEV/FCVで販売100%を目指す」という目標についても踏み込んだ質疑があった。
「2040年までの販売目標はどうするのか?」、三部社長の答えは明快だった。「社会への責任として2050年のカーボンニュートラル社会を目指す、という目標は掲げ続ける。ご質問の『2040年までに』という目標はそのための段階的指標であったが、現状、達成が現実的ではないこともよくわかる。なので、その販売目標は取り下げる。現在社内で再設定目標を検討しているが、2035年までのCO2排出量削減目標値の公表というかたちになると思う」。
さらにこう続けた。「創業以来、稀に見る不透明な時代だと考えている。この時代に対応するために、どのようにブレても対応できるような体制を整えたい」。
2021年時点のホンダが描いたEV市場予測と、2026年の実績との乖離は北米だけで年間約150万台規模に達している。ACC II規制の事実上の無効化、IRA補助金の終了、米関税の開始——政策環境が短期間でここまで激変するとは、当時の誰にも予測できなかった。「目標を取り下げる」という判断は敗北ではなく、現実を直視した経営判断だ。2050年のカーボンニュートラルという大目標は変わらない。そこへ至るルートを柔軟に引き直す。それって……「マルチパスウェイ」ってこと??
勝負の核心は「次世代HEV15車種」+「N-BOX EV」だ
当面、ホンダはどの方向へアクセルを踏むのか。今回明らかにされたのは、まずは「次世代ハイブリッド車の怒涛の投入」だ。
ここで注目したいのが、今回の会見会場そのもの。ホンダはビジネスアップデートの発表にあわせて、都内の記者会見会場に2台の新型ハイブリッド車を展示した。今後2年間で投入される次世代HEVの実車2車種である。詳細スペックや実車名はまだ明かされていないが、上場以来初の赤字という重いニュースを発表する同じ場に、ピカピカの新型車を並べる——このあたりの演出に、「おお、クルマ屋らしくなってきたなあ」と見直した。
決算会見に新車を置くというあたり、「我々はホンダだ、クルマ屋だ」という自覚が滲んでいる。ここ数年のホンダからは、そういう体温が薄れていたように感じていた者としては、久しぶりに「あ、ホンダが戻ってきた」と思った瞬間だった。
実際、今後の商品展開の内容も相当に具体的だ。EVに振り向けていた開発・生産リソースをHEVに再配分し、2029年度までに北米を中心にグローバルで15車種の次世代ハイブリッドモデルを投入する。しかも「当初のHEV投入計画よりさらに前倒し」という。次世代HEVシステムは現行より燃費性能を10%以上向上させながら、ハイブリッド化コストを30%以上低減。北米では2029年に新開発V6エンジン搭載の大型HEVも投入予定で、アメリカ人が大好きなフルサイズSUV市場に本格参入する。
北米オハイオの完成車工場は余剰能力をすべてICE/HEVに振り向け、LGとの合弁で建設したL-H Battery CompanyのEV用バッテリーラインはハイブリッド向けに転用する。「EVのために作ったインフラをHEVのために使い倒す」という発想の転換が、コスト競争力を生む。今後3年間でICE/HEVの開発・生産に投じる資金は4.4兆円にのぼる。

国内市場(日本)向けには、2028年にN-BOXのEVを発売予定であることも明らかになった。N-VAN e:、N-ONE e:に続く軽EVラインアップの拡充で、「軽自動車の使い方とEVの相性の良さ」を活かした日本独自の戦略だ。さらに次世代ADASの搭載モデルも2028年から5年間で15車種以上に拡大し、一般道から高速道まで目的地への全経路を支援するシステムを展開する。
用意されたスライドによると、2027年以降にSUVモデルを(シルエットを見ると)3車種、2028年年以降に次世代ADASを搭載した新型ヴェゼルを日本市場へ投入するとのこと。お、おおう、なんか急に本気出してきたな!
「ものづくり体質の徹底強化」も同時進行だ。目標は開発費・開発期間・開発工数をそれぞれ2025年比で半減させる「トリプルハーフ」の実現。生産効率は今後5年で約20%向上させ、中国・インドのコスト競争力も戦略的に取り込む。インドでは年間580万台を販売する二輪の販売網・ブランド力を四輪にも活かし、2028年に四輪の戦略車も投入予定だ。
3年後に過去最高益1.4兆円——数字より「これから出るクルマ」に注目せよ
2027年3月期の業績見通しは営業利益5000億円(追加EV関連損失▲5000億円を含む)、調整後営業利益1兆円、当期純利益2600億円。そして2029年3月期には連結営業利益で過去最高の1兆4000億円以上を目指す。




















































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