このままじゃクルマに乗れなくなる!? 車検や修理を担う整備士の現場で起きている[大変な事態]とは!!!

このままじゃクルマに乗れなくなる!? 車検や修理を担う整備士の現場で起きている[大変な事態]とは!!!

 車検や修理の現場が危機に陥っている。作業の要となる「整備士」が不足しているのだ。そもそも自動車整備士ってどんな資格なのか、どんな問題が起きているのか。自身も整備士資格を持つモータージャーナリストが、現場のナマの声を拾ってみた! 

文:山本シンヤ/写真:Adobestock(トビラ写真=Wasan@Adobestock)、スバル

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10年で1万2000人近くが減った整備士

この10年で整備士人口が激減している(One@Adobestock)
この10年で整備士人口が激減している(One@Adobestock)

 クルマは100年以上の歴史の中で、性能のみならず耐久/信頼性を高めてきた。しかし、そうは言ってもメンテンナンスフリーではなく、定期的な整備が必要なのは今も昔も変わらない。それを行なうのがクルマの“お医者さん”と言っていい自動車整備士だが、いま深刻な問題を抱えている。

 日本自動車整備振興会連合会の調べによると、2013年度から2023年度の10年間で整備士の数は1万1955人減少。ちなみに整備工場の数はほぼ横ばい、保有台数は増加傾向なので仕事はシッカリあるのだが、なぜか人が集まらない……。理由はいくつかあるが、やはり“待遇”だろう。もちろん給料の話もあるが、自動車整備士の重要性が世の中にシッカリ伝わっていないことが大きい。

 クルマは人の命を乗せて走るが、そのクルマを整備する自動車整備士はいわば「人の命をあずかる仕事」だ。ただ、それはあまり表に出ることはなく、いわば「縁の下の力持ち」のような存在だが、何も起きないことが普通なのでなかなか評価されず、逆に悪い所(例えば、重労働や環境が悪いなど)ばかり目立ってしまうのも、大きな原因だろう。

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意外と「安パイ」じゃない1級整備士資格

スゴイ資格のわりに1級整備士は「うま味」に欠ける(buritora@Adobestock)
スゴイ資格のわりに1級整備士は「うま味」に欠ける(buritora@Adobestock)

 自動車整備士は誰でもなれるわけではなく、国土交通省が実施する技能認定試験(学科試験/実務試験)を受けて取得する国家資格である。そのランクは下から三級自動車整備士、二級自動車整備士、そして一級自動車整備士に分類される。ちなみに筆者は二級自動車整備士の資格を持っているが、取得当時(1997年)はこれが最上位だった。

 一級自動車整備士は、昭和26年に自動車整備士制度ができてから1度も試験が実施されず「幻の資格」と言われていたが、「クルマの進化/革新」をきっかけに平成14年に初めて実施。受験資格は「二級自動車整備士を取得後、整備士として3年以上の実務経験」、もう1つは「自動車整備士の養成施設(一級整備士養成課程:4~5年)を卒業」のどちらかだが、二級/三級と比べても受験資格を得るまで確実に時間もお金もかかるなどハードルは高めだ。

 試験は一次が「筆記」、二次が「口述」、三次が「実技(一級整備士養成課程を卒業すれば免除)」が行なわれるが、合格率は高い時で4割+α、低い時2割+αと、難易度は二級/三級よりも圧倒的に高い。そんなことから、40万人いる自動車整備士の中で一級自動車整備士は2万人未満と少ない。

 いわば一級自動車整備士は狭き門を潜り抜けてきた自動車整備士のエリートと言えるが、残念ながらこの資格を持っていたら安パイ……と言うわけではない。

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1級を取得するモチベーションが起こりにくい?

クルマの知能化や電動化によって1級整備士の存在感は高まるはず(Ruslan Batiuk@Adobestock)
クルマの知能化や電動化によって1級整備士の存在感は高まるはず(Ruslan Batiuk@Adobestock)

 一級自動車整備士の最大の強みは整備可能な車両の制限がないこと(二級自動車整備士は二級ガソリン自動車/二級ジーゼル自動車/二級自動車シャシと「どのようなクルマを整備するか」で資格が分かれる)、さらにハイブリット/電気自動車/水素燃料電池車と言った次世代自動車の整備も可能となっている。

 このように見ると一級自動車整備士の価値は高く引く手あまたのように思えるが、現実は必ずしもそうではない。

 例えば、実務を行なう上では二級自動車整備士との差は少ないこと(二級自動車整備士の多くは上記3つの資格を持っているため)、特殊なクルマを扱う機会が少ない工場などでは一級自動車整備士はあまり重要視されないこと、そして整備工場の運営は二級自動車整備士と検査員の有資格者がいればOKなど、苦労して取得したわりには明らかなメリットが少ないのだ。ちなみに報酬の面では、二級自動車整備士と比べて1か月に数万円の差と、それほどに違いはない。

 ただ、100年に1度の変革期を言われている現在、クルマの性能は電動化、知能化、自動化など、より高いレベルに引き上げられていくのは間違いなく、それに対応できる自動車整備士が求められるのは明らか。今後一級自動車整備士の需要は増え、それに見合う待遇も得られるはずだ。

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