メーカーが戦略を練る際に制作するコンセプトカーやコンプリートカーは、世の中に流通することは少ないし、流通したとしても存在は明らかにならないことが多かった。しかし近年はネットの復旧により、様々な個体の生存、流通が確認できるようになっている。そしてまた1台、希少なモデルが発見された。完全な4人乗りの911である。
文:古賀貴司(自動車王国) 情報元:Hemmings
【画像ギャラリー】ホントに長い!! 大人4名が余裕で座れるポルシェ911のプロトタイプがスゴいゾ(4枚)画像ギャラリー快適な4人乗りの911として開発されたプロトタイプ
ポルシェが密かに開発していた「真の4人乗り911」が、Hemmingsという自動車販売サイトに掲載されている。これはイタリアの名門カロッツェリア、ピニンファリーナの手によって生み出された一点物のプロトタイプである。
2003年のカイエン登場まで、ポルシェは創業以来一貫して2ドア車のみを製造してきた。一部のモデルには後席が設けられており“4人乗り”を謳いこそしていたが「2+2」と呼ぶのがやっとで、大人が快適に座れるものではなかったのだ。
現在の911でも、この状況に大きな変化はない…と言っても怒られないだろう。そんなポルシェだが、1960年代後半、将来の成長を見据えて重要な課題に直面していた。
小型で高価なスポーツカーだけでは市場が限定的であり、持続的な成長のためには乗車定員を増やすことを目論んでいたようだ。
そんな中、ポルシェが白羽の矢を立てたのが、イタリアの名門デザインハウス、ピニンファリーナだった。
ルーフなどを伸ばして後部の快適性を大幅に向上
「平均的な体格の成人4名が快適に着座できる911ベースの2+2を開発せよ」と依頼内容は明確で野心的なもの。この挑戦的なプロジェクトに対し、ピニンファリーナは1969年式911をベースに大胆な改造を施した。
後席乗員の足元空間確保のためホイールベースを7.5インチ(約19cm)延長し、頭上空間のためにルーフラインも延長。こうして誕生したのが、「B17」の内部コードネームで呼ばれる特別な911だった。
しかし、4人乗りという目標達成のための改造は、“911らしさ”に大きな影響を与えた。延長されたシャシーにより車重は約100㎏増加し、重量配分は前39%:後61%という極端なリアヘビーに。
さらに視覚的なインパクトも劇的だった。
延長されたルーフラインは傾斜が緩やかになり、結果として背中を丸めたような独特なシルエットが生まれたのだ。確認された現在の状態で少し残念なのは、目を射るような鮮烈なライムグリーンのボディカラー。
1980年代、ネオンカラーが流行った頃に現在のオーナーが塗り替えたもので、オリジナルは上品なダークブルーだった。
世界に1台の911なのに走行距離は多め!?
このB17は商品化されることなく4人乗り2+2計画は鳴りを潜めた。1972年にポルシェがドイツのポルシェ・ディーラーの経営者に売却し、1974年にはスウェーデンのポルシェ・コレクターの手に渡った。
なんと50年以上もの間、このポルシェ・コレクターが保管してきたのだという。現在の走行距離は3万8000マイル(約6.1万km)。
50年以上も前の車だと考えると走行距離は少ないが、貴重な一点物のプロトタイプでこれだけの距離を走行したのは驚きだ。
今回Hemmingsに掲載された売り出し価格は125万ドル。世界に一台しか存在しないポルシェのプロトタイプとしては、むしろ控えめな価格設定とも言えるかもしれない。
「価格交渉可」とも記載されているので、興味がある方は是非!
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