5ナンバーミニバンや5ナンバーセダンなどの言葉が死語になりそうなくらい、最近のクルマは大きくなっている。全幅が1695mmにキッチリ抑えられたクルマは少なくなって、多くのクルマが3ナンバーサイズだ。ボディの拡大路線には「デカい! デカすぎる!」と騒ぎたくなるが、コイツを見たら「普通だったね」と気分が収まってしまうかも。メガトン級のデカさを誇ったメガクルーザーを紹介していこう。
文:佐々木 亘/画像:トヨタ、陸上自衛隊
【画像ギャラリー】民生転用された陸上自衛隊採用車! デカくてスゲーやつは防衛・災害からレジャーまでいけちゃう!!(10枚)画像ギャラリーこれでも立派な乗用SUVなのよ
メガクルーザーは1996年に登場した。陸上自衛隊向けの高機動車(人員輸送車両)を民生用に仕立てたSUVである。驚くべきはそのボディサイズだ。
全長5090×全幅2170×全高2075mmというビッグサイズ。特に全幅が2.1mを超えているというのは、一般的な乗用車では考えられないサイズ感だ。
ただ、この手のクルマにしては全高が低く抑えられている。最低地上高は420mmも確保されているのに、これだけの全高の低さを実現できたのは、トランスミッションなどを室内側に持ち上げ、運転席と助手席の間に配置しているからだ。
それが故に運転席と助手席の間は大きな盛り上がりがあり、2.1mもの全幅がありながら、前席の乗車は2名までとなっている。ちなみに後席は通常サイズのシートが2脚と補助サイズのシートが2脚あり、4名が着座できる。
こんなに大きな車体を運転するのは大変そうに思うのだが、意外にも最小回転半径は5.6mと小さい。これはリアに逆位相4WSが採用されているためだ。
逆位相4WSは最大12度の舵角を与えられている。4WSではないハマーH1の最小回転半径は8.1mにも及ぶから、逆位相4WSがどれだけの効果を発揮しているのかがお分かりいただけるだろう。
モノグレードでの販売で、発売当時は962万円だった。1999年にはエンジンに電子制御燃料噴射装置が備わり、動力性能がアップして価格もアップ。それでも980万円と1000万円の大台には乗らなかったのには、またまた驚かされるばかりだ。
2001年に生産が終了し、その間登録されたのは133台。一部では一般ユーザーの購入もあったが、大半は地方自体やJAFなどに販売された。
巨体を動かす心臓部には4.1Lディーゼルターボ
発表当時のメガクルーザーに搭載されていたエンジンは、4.1L直列4気筒インタークーラー付きディーゼルターボ(15B-FT型)だ。当時、トヨタが新世代エンジンとして主力にしていたLASRE(レーザー)エンジンのひとつで、最高出力155ps、最大トルク39kgmを発生する。低回転域からの図太いトルクが特徴的だった。
トランスミッションには電子制御式4速ATのECTが組み合わせられ、2速発進モードを備えるなど雪道などの滑りやすいシチュエーションにも対応している。
サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式の4輪独立懸架を採用。高い剛性と突き上げへの吸収の良い足だった。さらにフロントにはスタビライザーを装着し、前後にロングストロークのトーションバースプリングを採用することで、オンロードでの快適な乗り心地も実現する。
装着されたタイヤは37インチとこちらもメガトン級の大きさ。もちろん駆動方式はフルタイム4WDで、トルセンLSDのほか、センターデフロックや電動式の前後デフロックも備える。
車体は大きいのだが、機能や機構は細かく、それぞれの部品も小型化かつ軽量化を図られているのが、メガクルーザーの特徴だ。現代の社会環境に鑑みても、メガクルーザーが復活することはありえないだろうから、もしも乗る機会に巡り合ったら、スーパースポーツカーに乗るのと同等、いやそれ以上の価値があることかもしれない。
こんなメガなクルマを民生転用してしまうなんて。当時のトヨタの気合には目が回ってしまいそうだ。












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